第6話 何でそんな大物がこの地に?
「未だ服装のことを根に持ってるのかい?」
「ちーがーうの、忘れてたの。ファルマコに伝えなきゃいけないことがあったの。あのねあのね」
「うん? 何だい? 落ち着きなよ、ウリエルさんらしくもないよ」
一日未満しか付き合っていないが、ウリエルは基本ほんわかとしていて穏やかだ。 基本的にマイペースだ。そんな彼女が慌てているのは珍しい姿にも思えた。
「ベリアルがこの近くに来ているの」
「ベリアルってあのベリアル?」
ウリエルはコクリと頷く。
堕落した御使いで地獄の七人の王の一人。
旧約聖書ではソドムで崇拝されていたことで知られる存在。かつての文学の文献から察するに二番目に産まれた最年長の御使いの一人らしい。かつて全天に居た三分の一の天使達を巧妙にかどかわした議論の天才としても知られる。
今の僕の明らかな論点のすり替えに気付いて思い出したと言ったところだろう。
「そんな大物がどうしてこの地に?」
「それはわからないよう」
「それでベリアルとやらは何処に?」
「うーん、わかんない。なんかむこうからぼうがいしているの」
「ふーん」
害がなければ良いのだが。かなり有名な悪魔だし、相手にしたら厄介だろう。厄除けのつもりはないが、聖書を黙読する。
最近は便利なものでスマホにて聖書が読める時代になったのだ。使徒書簡の一節を黙読する。
「ファルマコ、何しているの?」
「日々の聖書黙読」
「おお、えらいねえー」
ウリエルが感心した様に言う。
「でもね、僕は通読をしたことはない」
通読する人達は本当に大した人達だと思う。特に旧約聖書なんか解かり辛くて解釈が難しい。通読するだけでも一苦労だろうに。
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