第4話 ケチ臭い天使だ……
それにしても蜂蜜か。太ってから糖質制限しているのを思い出して無性に食べたくなった。スプーンを用意して声をかける。
「ウリエルさん、それを少し分けてくれないかな?」
「だーめっ。これはウリエルが食べるの」
「むう」
何と器量の狭い御使いなのだろうか。そもそも僕の金で買ってきたものなのに。
「それにウリエルの引いている風邪が移っちゃうよ」
「そうか、お気遣いありがとう。お嬢さん」
風邪引いている時点マスクしろ、と突っ込みたかったが、これでもウリエルなりの気遣いなのかも知れない。
それより訊きたいことが他にもあるんだった。
「ウリエルさん、僕の手はどうなっているの?」
不可思議な刻印を翳して幼女に又訊ねる。
「けーやくかんりょーの証」
所々、喋りきれていないのは特性なのか天然なのかさて置き疑問に思ったことがある。
「そも、何の契約ですか?」
「ひとことでいうとね、四つの願いごとをかなえてくれるすごいの」
「ふーん、じゃあ僕が某通販サイトの社長さんみたいな大富豪になりたいって言ったら叶えてくれる訳か」
「んーん、それはむりなの」
「何で?」
「神様が心にかなったことしか願いは実現しないの」
「ふーん」
何とも使い勝手が悪い刻印だと思った。清貧を好まれる神がギトギトした人間の欲望を叶えてくれるとは思わない。詰まるところ、人助けみたいなことにしか使えない代物だとみた。
「ウリエルさんは何で僕のところに来たの? 他の天使が来る予定がなかったの?」
「ウリエル、じゃま?」
「いや、そう言う訳じゃないんだ。何で四大天使の一角がわざわざ僕なんかのところに来るのかなって思ってさ。正直、もっと下級の御使いで良かったのでは?」
「神様の考えたことだから」
成程、神の御心は誰にも解らない。カトリック教会はその代表だ。神の御心が解らないからあれこれ悩んでも仕方がない、
今日一日を精一杯過ごせば良いとは金言だ。
ウリエルのぼんやり平和なところもそこに起因しているのだろう。
別にカトリック教会とプロテスタント教会の違いをどうこう言うつもりはない。そこはお互いに良い賜物を分かち合えたと解釈すれば良い。
ウリエルは欠伸をして平和なことを言う。
「おひるねするね」
そう言ってスヤスヤと眠りに落ちた幼女。無防備過ぎるな、この幼女は。寝てる間に毒牙にかかるとか想定していないのだろうか? それとも僕だから手出ししないと安心しきっているのか。確かに草食系なのだけどさ。
性もない。何処かに掛け毛布しまっていただろうか? いっそ、汚いから掛けるのもどうかと思ったので比較的綺麗なコートを持ってきて掛けた。
「どうしたもんかねえ……」
途方もない御使いがやってきて途方にくれている。一見、駄洒落だが、全く洒落にもなっていない状況下で途方にくれていた。
神様、助けてくれとは言ったが、何でこんな幼女が来たんだ? 答えが出ないので自分も寝ることにした。聖書はこう言っている。
『明日のことを思い煩うな。明日は明日自らが思い煩う。その日の労苦は、その日に十分ある』
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