第0話 独白
長い歴史があると言われているサラージアは、今その長き歴史に終止符を打とうとしていた。
王城内に立て籠もる兵士はおよそ1万1000名、それに対して王城を包囲する革命軍の兵士の数は4万を超えていた。もはや逃げる場所が何処にもない王国軍は王城に立て籠もるしか手は無く、革命の正当性が欲しい革命軍は、城下町に取り残された国民に被害を出すわけにはいかないため、強引な手段を取る事ができず戦況は膠着状態になっていた。
だが、五分五分というわけではない。補給を行う事が出来る革命軍は、食料を半永久的に確保できるという点で王国軍に勝っていた。
外部からの軍事介入が無い限り、このまま戦争が長引けば革命軍に勝利が訪れる事は、両軍とも認識していた。
しかし、国家を守る為の王国軍に戦わずして降伏という選択肢は無かった。
やる気、勇気、根気という感情論で、籠城を決行、当然城下町で暮らしていた国民も運命を共にする事になった。
このまま戦争は長期化して、双方ともが大きな被害を被るだろう、と誰もがそう考えていた。少なくともこの時までは。
革命軍が、第一陣として様子見程度で送り出した1万5000の兵士による正面からの突撃、その直後にまるでタイミングを見計らったかのように王城を守る為の門がひとりでに開いた。
もちろん、両軍ともそのような事が起こるなど、微塵も想定していなかった。
そして幸か不幸か、その事に一番最初に気が付いたのは革命軍の方であった。
城門が開いた事にいち早く気が付いた革命派の将軍が、全軍による突撃を決行、一時的とはいえ城壁という絶対的な防御を失った王国軍は、たちまち総崩れとなり長い歴史を持つサラージア王国は、その日の内に滅亡した。
*
僕の兄は、優しい人だ。
一歳年下の僕をまるで天使のように扱ってくれて、いつも側にいてくれた。
要望は、何でも通ったし、たまにお菓子も作ってくれた。
僕の兄は、強い人だった。
時折、庭で剣の修行を行っている様子を見た事があったが、僕には絶対に真似できないような動きをみせていた。
周りにいた兵士達から聞いた話では、その動きは既に群を抜いており、領内一の剣士になる事は間違いないらしかった。
僕の兄は、誰もが認める天才であった。
7歳で初陣を行い、8倍の兵力差を持つ敵に圧勝。
その勢いは留まる事を知らず、敵国内の革命派へ武器支援と食糧支援を行い、直属の諜報部隊を使って裏で暗躍し、革命を成功させた。
サラージア王国は崩壊して、早い段階から革命派についていた貴族を除いたほとんどの貴族や王族を投獄、もしくは鉱山送りにした。
新たに成立したジア連邦共和国を議会制共和国にすると、国民から募った議員を中心とした民主主義政権を発足させた。
もちろん、この政策には裏があった。
自由という甘い飴をぶら下げて、連邦共和国民を従わせようという計画だった。
議会による多数決で物事が決められるので、一見公平であるかのように見える。
だが、共和国を代表するはずの議員は、ほとんどがハーンブルク領に本拠地を置く企業や商会の息がかかった者たちだった。そんな彼らが、ハーンブルク家からの命令に従わないわげがなく、ハーンブルク家関係者だけで過半数を占める状況であった。
国の乗っ取りにほぼ成功し、領内の経済力は鰻登りであった。
そんな時だった、兄が僕にこう言ったのは。
「ジア連邦共和国の管理を任せる事にした。このまま放置すれば、確実に荒れる。仲間を集めて、最高の国を作ってくれ。」
思えば、兄に頼られたのは初めてだったかもしれない。
ずっと可愛がってくれた兄へ、恩返しをする良いチャンスだと思った。
僕は、考えるまでも無く即答していた。
「お任せ下さいっ!兄さんっ!」
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どうでもいい話
『兄から国を押し付けられたので、とりあえず戦闘メイドと建国します。』
を、今後ともよろしくお願いします。
え?主人公は誰なのかって?
言わんでもわかるでしょ。
我らが天使こと、『ユリウス・フォン・ハーンブルク』ですっ!
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