スニーカーは春を呼び寄せる

りょう。

第1話

路地裏の猫に挨拶を済ませて私は軽やかに走り出した。

新しく買ったスニーカーは、気分を上げる為の必需品だ。


いつも走る公園には色々な人がいる。


毎日同じ服を着ているおじさんや、煙草集団の若者たち、そして……。


「おはようございます」

「お、おはようございます!」


爽やかでイケメンの青年、私の今の最推しである。

なんと一緒に走る機会も増えて最近では仕事や趣味の話まで出来ている。

案外彼はインドア派でゲームが好きらしく、最近出たゲーム機が手に入らないと前回は嘆いていた。

最早私がゲットして献上したい。


「そう言えば、今度ご飯でも行きませんか?」

「は、え?!いいんですか!」


と、ここで重大イベント勃発である。

既にランニングで心拍数は早いのに、そんな事言われたら今度は破裂してしまうかもしれない。

私は慌ててニヤける顔に力を込めた。


「お酒とか飲みますか?」

「あ、甘いのなら、梅酒とか?」

「ならいい場所知ってるのでそこに……」



あれよあれよという間に食事の日取りが決定し、連絡先まで交換していた。



「じゃあ、また」

「は、はい!また!」



もしかして私、物語の主人公なのか!とテンションが上がり公園のベンチに戻って携帯を開いた。


念のため確認した彼の名前を何度も読み返すと、携帯を胸に押し当てる。


「はぁーー幸せかよぉ」


今だけは、私は幸せな物語に出てくる主人公。

帰ったらハッピーエンドを迎える本でも読み返そう。


私はスキップで家へと帰るのであった。

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スニーカーは春を呼び寄せる りょう。 @ryo_tamaki_syo

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