14
うーん。
俺は目を覚ます。
あれ?ここどこだ?俺いつ寝たんだ?
俺は記憶を辿るが、塾が終わった後に奏に電話して以降の記憶がない。
周囲を見渡すが、知らないホテルにいるようだ。
少し豪華なこのホテルも普段ならテンションが上がるだろうが、今は恐怖を感じている。
俺は取り敢えずベッドから出ようとして自分が服を着ていないことに気づく。
はっ?周囲を見渡してみるが制服は見当たらない。
すると扉がガチャっと開いた。
そこに立っている黒の下着姿の女性に俺は驚きを隠せなかった。
「と……どろき……」
轟は俺のいるベッドの方に近づいてきた。
「向陽くんおはよう。よく寝ていたけど疲れていたの?」
俺は何が起こっているのか状況を把握するのに時間を要した。
彼女はベッドの上に乗ると俺の方に近づいたきた。
俺はそれを避けるよう後方へと逃げる。
これ以上逃げられないベッドの端まで追いやられる。
「轟これはどういうつもりなんだ?」
彼女は何がおかしいのかクスッと笑った。
「えーっ?向陽くんまだ気づかないの?意外と鈍感なんだね」
そういうと彼女は少し声のトーンを落として続けた。
「男と女でやることと言ったら1つでしょ?」
彼女が俺に襲いかかってきた。
ちょうど同じタイミングで扉を叩くドンドンという音が聞こえた。
「コウくんいるの?いるなら返事して」
奏の声が聞こえる。
「おい、臣いるのか?」
「臣様いらっしゃるのですか?」
今野ともう1人女性の声が聞こえる。
「ちょっとなんなの?」
轟が体を起こしベッドから降りると不満そうに文句を言う。
「おい扉開けるぞ」
今野がそういうと鍵が開く音が聞こえた。
バタバタと見知った顔が3人、そして燕尾服とメイドの服を着た大人が3名ほど部屋の中に入ってきた。
1人の女の子が轟の元に近づくとバチんと思いっきり頬を叩いた。
「小鞠さん何をやってるんですか。あなたがやってることは犯罪ですよ」
頬を叩かれた轟は来栖を睨み《にら》反論する。
「どうせあなたにはわからないわよ。親が決めた人と結婚しなきゃいけないなんて。政略結婚の時代なんておかしいのよ。だから既成事実を作っちゃえばって……」
そう言って轟は床に崩れ落ちる。
「政略結婚は確かにおかしいわよ。でもだからといって知人を襲うのは違うわ。嫌ならちゃんと両親に言いなさい」
そう言う来栖の目はしっかりと轟を見ていた。
「
「承知いたしました。お嬢様」
そう言って一緒に室内へ入ってきた執事とメイド達は来栖の指示でそれぞれの仕事を始めた。
俺は庵さんから服を受け取ると、洗面所へ案内されたのでそちらで着替えることにした。
俺が着替えて戻ると来栖さんは電話を終えたようで着替えを終えた轟さんをソファへ座らせ、落ち着かせるためかあったかい飲み物を手渡していた。
「小鞠さん落ち着きましたか?」
そう言って心配そうに問いかける彼女は先程までとは全く別人のように見える。
奏と今野は来栖の横に座っており、俺はその隣に腰を下ろした。
轟さんは何も言わず項垂れている。
話もできなそうな状態なので俺は3人にどうしてここがわかったのか尋ね尋ねる事にした。
来栖さんが淡々と回答した。
「本日の早朝に小鞠さんから私宛にメッセージが届きました。写真もありすぐに臣様だとわかりました。私は家の権力を使い防犯カメラなどの映像を分析しここを特定いたしました。また調べてる間に奏様にご連絡を入れご一緒に訪れました。今野様につきましては奏様の家の前におり一緒に行きたいと懇願されましたので連れてきました」
俺はすぐに反応をすることができなかった。
すると奏が話を始めた。
「あのね。来栖さんは悪い人じゃないんだよ。轟さんが来栖さんのデタラメな嘘を流していただけで、来栖さんはすっごくいい人で、ただコウくんとお話をしたかったみたいだけど……」
奏がちらっと来栖さんの方を見たので俺もそちらをみる。
すると彼女は先程までハキハキと喋っていたのに急に黙り込み俯いた。
奏がチラチラと俺と奏を交互に見やり口をパクパクと動かしているが何を言っているのかよくわからない。
なんて言葉をかけていいか悩み、改めて自己紹介する。
「来栖さんと直接お会いするのは2度目だよね?俺は臣向陽。
彼女も落ち着いたのかこちらを見ていた。
「私は来栖伽耶。桜琳高等学校3年。臣様とお会いするのは2度目でお間違いございません。轟さんとは同級生で家族ぐるみの付き合いがありますわ。この度は轟さんがご迷惑をおかけしたみたいで、本当に申し訳ございません。後日しっかりと謝罪させますので、今日はどうかゆっくりなさって下さい」
そう言うと来栖さんは庵さんを呼ぶと俺たち3人を送るように指示した。
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