第44話 プランツの思惑
城の大広間では、何人もの人間やプランツのしもべである生物がたおれていた。
その中で、プランツとブラックは向かい合っていた。
ブラックが余裕の笑みを浮かべている事を不気味に思ったが、今のところ自分の計画通り進んでいるのだ。
「ブラック様、魔人の住む異世界に行く事を許してくださいましたよね。
お言葉に甘えて、行かせていただきます。
しかし、あなたにはここに残っていただこうと思います。
異世界に行けない事情が出来れば、仕方ないですよね。
わたしが代わりにあなたの国を治めてあげますよ。」
「プランツごときが何を言うか。我々幹部にも劣る魔人のくせにブラック様に楯突くなどありえないぞ。」
ネフライトが声を上げると衝撃波を撃ってきたのだ。
私は肩に乗っている相棒というべきしもべに、盾になるように命じたのだ。
この相棒は他のしもべと違い、私の手足や武器となってくれるもので、盾や剣になれるのだ。
そして、問題なくレジストする事が出来たのだ。
すかさず、トルマが剣を抜いて、向かってきたのだ。
どうも、武術を習得している魔人のようなのだ。
相棒であるしもべは剣となり、トルマの攻撃を防いだ。
剣術に関しては私も自信があるのだ。
それに剣がしもべであるので、上手く私の意思が伝わるのだ。
思うだけで勝手に動いてくれるため、私は別の攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。
「私はあなた達にかまっている暇は無いのだよ。」
私はネフライトとトルマを相手にしてにしていたが、一緒に来た他の魔人達に相手をするように指示をしたのだ。
そして私はブラックに向き直ったのだ。
「さあ、あなたにはここで倒れてもらいます。
人間との共存を望む王は必要ありませんから。」
そう言って私は種をブラックの周りに撒き、何体ものしもべを成長させ囲んだのだ。
しもべ達はブラックに何重もの蔓を巻き付け、動けないように拘束したのだ。
そして私の相棒であるしもべを剣として、攻撃を仕掛けようとしたのだ。
ブラックはそれでも薄っすらと笑みを浮かべたかと思うと、拘束されていた蔓ごとしもべを一瞬で黒い粉末と化したのだ。
実はブラックの力を実際見るのは初めてだった。
魔力や気配で自分よりも格上か、格下の魔人なのか、ある程度は攻撃などを見なくてもわかるものなのだ。
そのため、格上なのは分かっていたが、一瞬でしもべ達が消滅した事に息をのんだのだ。
「これで終わりですか?
実につまらないですね。」
ブラックは体についた黒い粉を払いながら、言ったのだ。
「城を壊すわけにはいかないので、騒ぎは大きくしたくないのですよ。」
「人間のことを気にしてるから、魔人として貴方はダメなんですよ。」
私は最大限の魔力を剣となっているしもべに込めたのだ。
そして、その剣からブラックへ巨大な衝撃波を放ったのだ。
ブラックは回避する事は可能だったのに、ブラックの後ろには人間達が倒れていたためか、左手で衝撃波を受け止めたのだ。
「だから、騒ぎを大きくしたく無いといいましたよね?
あなたの事を消滅させる事は簡単なんですよ。」
そう言い、ブラックの先程までの笑みは消え、私を睨み返したのだ。
そして、左手で受け止めた衝撃波のエネルギーをあっという間に消滅させたのだ。
やはり、まともにブラックと戦う事は無理か。
私は最後の手を使う事にした。
倒れている人間の王や娘のところに移動して近づこうとした時である。
目に見えない壁に遮られたのだ。
よく見ると広間の中心に小さな結界がはられていたのだ。
そして、倒れた人間達が次々と起き上がりだしたのだ。
それも無傷のようで、何のダメージも受けてないようなのだ。
私が結界に気づくまで倒れたふりをしていたと言うのか。
くそっ、騙されたのは私か。
誰も毒で倒れた者がいないという事は、前もって計画がわかっていたという事なのか。
しかし、その小さな結界は城の結界と違い、どうも簡易結界のようで、少しは魔力が届くかもしれない。
それに、よく見ると私が振り撒いた種がいくつか結界内にあったのだ。
私は集中して結界内に魔力を注ぎ、しもべを種から成長させる事に成功させたのだ。
これで計画通りになったのだ。
しかし、さっきの一撃と結界に送った魔力で、私の力はほとんど無くなったのだ。
だが、これでブラックの弱みは握った。
「なるほど、この中には入れないようですね。
しかし、私のしもべは成長する事が出来たようです。
どういう意味かわかりますか?
私を殺す事が出来ても、私はこの部屋を一瞬で猛毒で充満する事ができるのですよ。
あなたの大事な人間、特にあの黒い瞳の娘も命を落とす事になりますよ。」
「相変わらず、小物の魔人は汚い事をしますね。
ですが、考えすぎですね。
たしかに人間とは共存を望みますが、その娘とはほとんど面識はないのですよ。
人質としては弱いと思いますがね。」
ブラックはほとんど関係がない素振りを見せたが、私は覚えているのだ。
オーラは違えど、以前魔人の城に出入りしていたあの娘とそっくりではないか。
絶対に放っておく事などできないはずなのだ。
そして、不思議な薬の作り手でもあるのだ。
あの、クォーツにも使った闇の薬があれば、ブラックをも消滅まではしなくともかなり弱らせる事ができるのだ。
生かしておくほうが得であるのだ。
「では、そこの娘に問う。
ブラックはああ言っているが、このままでは自分も含め他の人間達も犠牲になるぞ。
お前ならば、ブラックを弱らせる薬を持っているのでは無いか?
ブラックを弱らせてくれるなら、人間達を酷い目にはあわせないぞ。
・・・私はシンブなのだよ、舞。
王様やヨクとは人間としては、長年の付き合いがあるのだよ。
私だって人間なら誰でも傷つけていいと思っているわけでは無いのだ。
わかるかい、舞。
ブラックは絶対にそなたを傷つける事は出来ない。
だから、今、人間を守れるのは舞しかいないのだよ。
どうかな。
取引しないか?」
私はブラックを警戒しながら、舞に取引を申し出たのだ。
そして、舞は神妙な顔付きで結界の外に出てきたのだ。
・・・計画通りであるのだ。
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