第43話 魔人ストーム

 グラウンの作った岩山と深い崖で、私たちは別々に戦う事になったのだ。

 さっきまで、精神支配を受けていたが、グラウンから死ぬなよと言われた事で、私は冷静になれた。


 私はいつも、プランツとグラウンの後をくっついていた妹みたいな存在だった。 

 2人みたいに強くなりたくて、見よう見まねで特訓していたものだ。

 そんな時、プランツから自分の得意とするものを伸ばすべきだと言われ、私は風を操る魔法に力を入れたのだ。

 体格の違いがあったり、得意とするものが違うわけだから、同じものを求めても仕方がないことに気づかせてくれたのだ。

 500年前も2人が戦う事を決めた時、私も一緒にと決めたのだ。

 それは今も同じ。

 2人と肩を並べる存在になりたかったのだ。

 だから今回も自分の得意とするもので、絶対に勝ってみせるのだ。

 そして、2人に頑張ったなと、褒めてもらいたいのだ。

 

 相手は幹部のスピネル。

 確か火を操ることを得意としているはず。

 自分よりは格上であるのは確かだが、グラウンと合流するまでなら、何とか防げるかもしれない。

 私はスピネルを睨みながら、時間を稼ぐ方法を考えていた。


「さーて、もう始める?

 僕はいつでもいいよー。

 向こうは岩山と崖で何が起こってるかも全くわからないねー。

 僕はユークレイスみたく冷酷じゃないよ。

 楽しく戦えれば満足だけどね。

 女の子をいじめるのは趣味じゃないから、降伏するなら今だよ。」


 相変わらず、ふざけた話し方をするやつなのだ。

 見た目はかなり若く見えるが、私よりも長く生きている魔人なのだ。

 油断する事は出来ない。


「あ、その前に、周りの雑魚が邪魔だね〜」


 そう言って、手を一緒に来た魔人達に向けると、衝撃波を放ったのだ。

 私よりも格下の魔人達は一瞬で倒れて起き上がることが出来ない状態になったのだ。


 私はより怒りが込み上げたのだ。


「そのヘラヘラした態度も今だけよ。」


 私は天を仰ぎ、高く手を振り上げた。

 そして、風を上手く動かし、竜巻を作ったのだ。

 それに衝撃波を乗せてスピネルに攻撃を仕掛けたのだ。

 竜巻の中心にスピネルが入った途端、大きな音が響いたのである。

 格上の魔人でも、私が作った竜巻の外には、簡単には出ることが出来ないはずなので、その間にある程度のダメージを与えることが可能のはずなのだ。


 ・・・しかしスピネルは何事もなかったように竜巻の外に出てきたのだ。


「へー風を操るんだねー。

 気持ちいいくらいの風と衝撃だったよ。

 すごいけど、残念ながら僕にはきなかいみたいだよ。

 だって僕も風を操る力を持ってるからね。」

 

 スピネルは、私が作り出した竜巻で荒れる風を自分の周りだけ無風状態とし、問題なく動けるようなのだ。


「でも、好きなのは風より炎なんだよねー。

 だって綺麗だろう?」


 そう言いながら、スピネルは手のひらから炎を出現させ、火のサークルを作り私をとり囲んだのだ。

 そしてじわじわと炎を大きくしてきたのだ。


 なるほど、風を操る力があれば、炎の大きさや強さを操作することも簡単なわけなのだ。

 さすが、幹部の魔人であるのだ。

 しかし、感心している場合では無い。

 ここで負けるわけにはいかないのだ。


 私は風で雲を操作し、雨雲を呼び寄せ、雨を降らせたのだ。

 激しい雨を降らせる事で囲まれた火を全て消したのだ。

 私の風と雨の力があればきっと何とかなるはず。

 グラウンが来るまでは。

 私は自分にそう言い聞かせた。


「天候も変えられるなんてすごいねー。

 せっかくの綺麗な火が消えちゃったよ。

 じゃあ、消えないようにすればいいだけだね。」


 スピネルはニヤリと笑いながら、手の上に起こした炎を丸めるようにして、大きな玉を作ったのだ。

 そして、それを投げて攻撃してきたのだ。

 こちらも、風を上手く使う事で避けるしかなかったのだが、スピネルが多数の同じような玉で攻撃し始めると、もう逃げ道は無かった。

 私にはこの攻撃をレジストするまでの魔力は無いのだ。

 風を使い避けていたが、何撃かをまともにうけてしまい、私は動けなくなったのだ。


 ・・・ああ、やっぱり私はまだ弱いのだ。

 グラウンが来るまで持たなくて、ごめんなさい。


「どうやら、向こうも決着がついたみたいだよ。ユークレイスから連絡がきたから。

 これ以上抵抗しなければ、ひどい事はしないよ。

 ブラックにそう言われているからね。

 だから、おとなしくしてね。

 でも、この後はユークレイスの尋問タイムだよー。

 頑張ってねー」


 そうか、グラウンも倒れたと言うことなのね。

 私は抵抗する力が全て無くなったのである。

 




 

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