8回目28

 はっはっはっ。




 外をでたらメイドが追ってきた。




 誘導されているともしらず、着いたのは広場だった。




 おかしい誰もいない。




 時刻は夜。誰かがいる時間帯だが、誰もいない。それどころか、物音も全くない。静寂が辺りを包んでいた。




「やあ、ブータン、よく来たね」




 訂正。見たくなかったのかもしれない。そこには天使の笑顔を向けた翼が立っていた。




「どうしてただ」




「んっ、どうしたんだい」




「どして、おらを殺そうとするただ」




 翼は心底おかしそうに笑う。




「何故っ、何故かって、これは傑作だ。知っての通り、僕は魔王に選ばれた。敵を狙うのは当然だろう」




 目にも止まらぬ早さで足を蹴り俺の顔を踏みつける。




「何故お前如き下等生物があんな美人と一緒にいる。本来なら俺のポジションだろう。前回と同じように、豚小屋で落ちぶれた生活をしていればいいものを」




 俺は目を見開く。何故その事を。




「死に戻りしているのはお前だけじゃない。もっとも俺は死に戻りじゃないがな。おかげで今回は楽しめなくなった。極上の女達をみすみす見逃す俺の気持ちが分かるか。んっ、どうしてくれるんだ」




「ぎゃぁっぁぁ」




 肩が外れる音が聞こえた。続いて手足折れ、鼻がひしゃげ、歯が折れる。




「ゆっゆるしてくれだ」




 もはや虫の息だ。早く楽になりたい。その気持ちに支配される。




「まだ駄目だ。分かってないようだが教えてやろう。俺は優しいからな。今回洗脳したのは七人。気絶させた五人と真理と史香だ。真理の方は時間はかかったが、気絶させるだけは何とかなった。


 五人組は簡単だったさ、京夜は俺のことを好きだから一番にかかった。続いて三人組は俺に惚れていて抵抗はなかった。あずさは親身に相談を受けたらちょろいものだった。チョロインだらけだ。前回いなかったメンバーばかりで、本来ならじっくり時間をかけて惚れ込ませ、俺好みに改造するつもりだった。最も、お前を殺った後、楽しむつもりだ。その事だけはありがとうと言っておくよ」




「彼女たちを道具じゃないだ。翼は誰にでも優しくて、俺にも優しくて、友達だと思っていただ。なのにどうしてだだ」




 一回目の時、優しくしてくれたのは翼だけだった。そのことでずいぶんと救われた。次もやろうという気持ちになった。八回も繰り返した原動力の一つはもう一度翼と会うためだ。




 なのにどうして。




「うせっんだよゴミ虫が、友達だとか虫唾がはしる」




 翼の蹴りで俺はごろごろと転がる




 意識が朦朧としてきた




「翼様、皆様の無効化の措置が完了しました」




「翼様、結界の準備が完了しました」




 いつの間にかメイドと執事がいた。




 ステータスに三人と表示されていた。




 最初から、翼の手の平に踊らされていた。




「じゃあな、くそ虫。次会うときは、もう少し面を良くしろ」




 そこで俺の意識はぷつりと途絶えた。




 目の前にはコンテニューしますかの文字。






























 もういいかな。もう十分頑張ったし、十分に生きた。ここいらがもう潮時だろう。




 俺の心は完全に折れた。




 もうこれ以上は無理だと完全に諦めていた。












 いいえのボタンを押そうとした。












 ほんとに押そうとしたんだ。














 押せない。金縛りにあったかのように押せない。




 何で何で押せない。力を込めてもぴくりとも動かない。






 その時、真っ白な空間に転移した。




 なにがどうなっているんだ。




「ようこそ狭間の世界へ、私の名前はフォーチュン、運命と選択の神です」






 そしてようやく俺は会った。俺にこの能力を持たせた神に。




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