4回目05

「ブータン、がんばって行きなさい」


「ブータン、サーヤにおみあげを忘れないでね~、絶対だよ~」


 半年が経過し、あずさの誘導も無事成功した。


 そして今日、コルナが雇ってくれた信頼できる冒険者数人とツヴァイを目指してサマンサの森を抜ける。


 なにげに俺の初めての大冒険だ。○バンストラッシュは使えないが。


「行ってくるだ」


 不安はある。だが俺は若干興奮していた。


 二人に手を振り、村を出てサマンサの森に向かった。


 順調だった。


 雇った冒険者達も気のいい奴ばかりだった。さすがコルナが雇った人物だと感心していた。トラブル無く、一日目が過ぎて、起きたら盗賊に捕まっていた。


 んっ、何か変だぞ。もう一回ちゃんと思い出そう。


 順調に行っていた。しかし起きたら盗賊に捕まっていた。


 まだまだ。


 盗賊に


 最後。


 捕まっている。



 冒険者何やってるの。ブ○イトさん張りに突っ込む。


 盗賊の顔を見ると、護衛していた冒険者が一人いた。


 OMG(オー・マイ・ガット)。


 前言撤回だ。コルネさん、貴女という人は。


 他の護衛同様縄でぐるぐる巻きにされ、身動きがとれない。


「おっおらを捕まえてもなにもいいことはないだよ」


 おっかなびっくりに、盗賊達に言う。


 お金もあまりないし、捕まる理由は思いつかない。


 これも世界の修正力か。


 だがしかし、これがシュミレーションゲームなら、選択肢があるはずだ。


 こい、こい、こい、選択肢よ。


 念じると、頭の中に三つ選択肢が出てきた。


 これだよこれ、やっぱり主人公はごうじゃなくちゃ。


 ・戦う


 ・アタック


 ・ピチュン


 駄目だこりゃ。使えねぇ~、選択肢マジで使えねぇ~。なんつークソゲーだ。どれを選んでも一発バッドパターンじゃねーか。


 そもそも戦うもアタックも同じじゃねーか。ピチュンってなんだピチュンって。死ねと言っているのか。


 死は覚悟しているが、誰が裏で糸を引いているのか次回の参考にしたかった。


「あっ、しらねーよ。俺はコルネにたのま」


 裏切り冒険者はボスッぽい人に殴られ、キリモミ回転しながら木にぶつかり、動かなくなった。


「おい、お喋りくそやろーが、口が軽すぎるだろーが」


 えっ、どういう事だ。


 そういえば、裏切った冒険者の顔は○川に似ているなと思いながら、視界が暗転した。





「五回目か」


 もう馴れたさ、うん。


 がっくりと肩を落とす。まさかコルナが裏切っていたとは。


 ○川似の冒険者の言うことを真に受けた訳じゃないけど、そう考えると辻褄が合う。


 村がブラッディベアーに襲撃されたときも姿を見た記憶はなく、ツヴァイに仲間がいると伝えれば必ずあずさは行こうとする。


 この四回のループを整理して、一番怪しいのはコルナだ。


 しかし、と思う。裏切る理由が俺には分からない。二回目の時、サヤの葬儀の時のあの涙は本物だった。


 考えられるのは、上からの命令に従わざるおえなかった。


 それが一番しっくりくる。洗脳されているのか、弱みを握られているのか、失敗すれば命が危うくなるのか分からないが、唯一つ言えることは、上が殺せと命じたら、コルナは実行するという点だ。


 やばい。そう考えてある説を思い出し顔面蒼白で頭を抱える。


 ループ物あるあるで三大説の一つ。それは、言ってしまったら、もれなくその人物もループしてしまう説だ。


 これはやばたにえんだ。もしそうなってしまったらエンドレスバッドエンド突入だ。


 まだ決まった訳じゃない。


 石の様に重たくなった足で英雄ギルドの前に来た。


 二つに一つだ。


 なかなか扉を開けれない。


 いったれーと思うのだが、びびって手が動かない。


 いけ、いくんだ!○ョーーーーー!!!


 そして俺は、扉を開けた。それがパンドラの箱か、はたまた違うのか。


 心臓が飛び出るぐらいどきどきしている。


 やはり、受付にはコルナ一人が立っていた。


 表情は普通だ、驚いた様子でも敵意ある様子でもない。


「英雄ギルドにようこそ、ご用件は何でしょうか?」


 良かった。腰を抜かしそうになるぐらい安堵する。


「あの、おら気付いたら森の中にいただ」


 必死に表情を取り付くろい、後は同じ説明、同じ事の繰り返しで、違うとすれば英雄ギルドで働く事を表明しなかったぐらいだ。


 なにも分からない状態でコルナの近くで働く事は危険だと判断した。


 何事もなかったかのように英雄ギルドを後にする。


 寿命が何年か縮まった思いだ。


 寒くもないのに、ぶるりと体を震わせる。


「ブータン」


 一瞬頭が真っ白になる。5回目の世界で俺の名前を知っているのはコルナぐらいだ。


 しかし、彼女とは違う声。しかも聞き慣れた声だ。


 つまり。


「サヤ」


 目線をしたに移す。


 スボンの裾を引っ張り、不安そうな表情でこちらを見ているサヤの姿だった。


 それから俺らは無言でサヤの家に行く。


 そこで語られたのは、俺が死んだ後の世界だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る