3回目04

あずさはすぐに見つかった。




 学生服に黒髪。




 こちらを見て、少しびくっとした表情だ。




 俺から話しかけねば。三度目の正直だ。




「あっあの、もしかして地球から来ただか。おっおらの名前は訳あってブータンという名前になっているだけども、怪しい奴じゃないだ。すっすぐそこに英雄ギルドていって、地球人を助けてくれる施設があるんで、案内するだ」




 心の中でガッツポーズする。とりあえず言いたいことが言えた。




「あっありがとうございます」




 あずさは警戒と嫌悪と半々の視線で見ているが理由を知っているので、気づかない振りをして先行する。




 英雄ギルドにつき、コルナにあずさの事を紹介する。




 それからは完全に俺のことは無視だ。用済み乙の如く。前は事務室に消えて、それからはあずさと直接関わりをもたなかったが、今回はその場に留まり、話が終わるのを待った。




 あずさに邪魔者の様な目で見られ、その場から逃げたかったがぐっと我慢する。




 俺も最初に聞いたが、コルナから、この世界の説明、基本的なルール、このギルドの事について説明があり、それが終わった後、質問に答える形だ。




 あずさの質問は衛生面だ。俺が居たので直接的なことは言わなかったが、この村のトイレや風呂事情等を聞いていく内に徐々に曇っていく。




 それもそのはず、あずさは潔癖性でJKだ。宿屋の和式ぼっとん便所には耐えられない。




 話を言うなら今だ。




「あっあの、おら達の家に来たらいいんだな。水洗式のトイレに風呂も完備してるだ。じょ、女子高生にはつらいんだな」




 よしちゃんと言えた。これが俺が考えた攻略方その一だ。半分はサヤのために何とかしたくて家をリフォームしたが、もう半分はあずさがくる前に居心地が良い環境を整えたかった。




 そしたら、いくらかあずさの気持ちも楽になるだろうと。




 あれっ、なんか俺失敗したのか。思っていた反応とは違く、あずさは顔をしかめ、軽蔑な視線だ。




 なんかやっちまったか俺。




 思い返す。




 トイレ、風呂、俺の家に来てほしい。うん、非常にまずい。スリーアウトチェンジだ。




 俺みたいなのが言ったら覗かれると危険を感じるのも無理はないだろう。




 まずった。やばたにえんだ。




「もっもう一人、サヤっていう小さな娘っ子がいて、そのこの家に居候してるんだな。もっもし、おらと一緒が嫌なら、おらが宿屋にとまるだ。どうだろかな」




 慌てて俺は言った。あずさは幾分か警戒心を解いたみたいで思案している。




「サヤの家なら宿屋よりも暮らしやすいと思います」




 リフォームが終わった後に、何度か来たことのあるコルナが太鼓判を押してくれる。




 やはり見た目の信用が第一なのか、それを聞いてあずさは了承してくれた。




 もちろん、俺は宿屋に泊まることが決まった。




 それからあずさのデイリークエストと、友達の情報収集をコルナに頼み、今日は俺はあがりという事になり、俺達の家に向かった。










「え~、サーヤ、お姉ちゃんと暮らすの。ブータンも一緒じゃなきゃ嫌だよ~」




 忘れていた。サヤを説得するのを。目の前のサヤは納得いかないのかプリプリと怒っていた。




 うちのサヤが可愛すぎる件について。




 疲れていたのか、顔合わせと家の中を一通り案内した後、俺があずさの来る時用に作った鍵付きのゲスト部屋で寝ている。




「ごっごめんな。あずさが男性恐怖症だけ、おらがいると気が安まらねんだ。同郷の人さかい助けてーんだ。二ヶ月ぐらいだと思うんだ。その間だけ我慢してけろ。家賃とかとっても罰はあたらねーと思うぞ」




「もー、仕方ないなーブータンは。サーヤに任せて」




 サーヤは胸を張り、任せろと言わんばかりに胸を叩く。瞳はお金マークだ。




 こうしてあずさ死亡回避作戦は開始された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る