3回目01

 なぜ死んだとか、ワーオーケンチャンアンビリーバボーだとか、そんなの関係ねぇ、おまえに食わせるタンメンはねぇ的な。ナッシングトゥーザマッチだ。オーマイゴッドファザーは降臨しないが。




 俺はただひたすら走っていた。




 森の中で、寝ていただけかもしれない。




 しかし、もし三回目なら。




 視線を気にせず、息も荒い。豚汗も凄くて周りは気持ち悪いだろう。




 そんな余裕は全くなかった、俺が考えていることはただ一つ。




 英雄ギルドの扉を勢いよく開ける。




 中には、突然開けられびくっとしたコルナの姿が。




 頼む言ってくれ、あの言葉を。




 俺は祈っていた。神様に。




「いらっしゃいませ。英雄ギルドにようこそ。ご用件は何でしょうか」




 三回目が確定した瞬間だった。




「よっしゃぁぁあ~~~やっただぁぁぁ~~」




 年甲斐もなく叫んだ。コルナに不審がられたが、気にならなかった。




 せく気持ちを抑え、金をもらった後英雄ギルドを後にする。




 頼む居てくれ。




 扉を開けた先、目線をしたに向け。周囲を見渡す。




 目が滲んできた。涙で前が見えない。




 いた。約一年ぶりの再会。




 最後に見た彼女よりも頬も痩け、背も小さく、服装もぼろ布だ。




 でも確かに彼女、サヤだった。




 サヤは震える手で俺の前に手を差し出す。




「サーヤにお金くだしゃい。助けてくだしゃい」




 そんなサーヤを、俺は屈み、抱きしめる。




「良かっただぁ~~」




 本当に本当にほんとぉ~に良かった。




 一生分の涙が出し尽くすぐらい長いことそうしていた。




 サヤの顔には、はてなマークが浮かんでいたが関係なかった。




「おらの道案内の依頼受けてくれないだが、金貨一枚でだ」




 サヤの手のひらに金貨一枚を置く。サヤの瞳はまん丸に驚き、キラキラ輝いて見えた。




「うん、サーヤに任せてくだしゃい」




 サヤは笑顔が一番だな。これを見るだけで帰ってきて良かったと思える。そのぐらいの、良い表情だった。




 それから、村の中を案内してもらった。




 といっても、俺は村の中を隅々まで知っている。金を渡すための口実だ。




 まず最初に行ったのは何でも屋だ。行商人以外で生活必需品は大抵ここで買う。




 食べ物、服、日用雑貨が所狭しと並んでいる。ミニチュアの○ンキホーテだ。




「ここが、何でも揃う場所だよー。サーヤも色々見たいなー」




 ちらちらとこちらを伺ってくる。




「好きに選んでいいだよ」




 そういうと、『わーい』とはしゃぎながらサヤは中に入る。あげた金貨で買い物しないのかと思うが気にしない。




 店主はサヤを見て顔をしかめたが、俺を見てほっとしたような表情だ。どうやら悪さするんじゃないかと疑っていたらしい。




 俺は胸糞が悪くなる。エッグ的な見て見ぬふりだ。とさかにきただ。誰だって人間は自分が一番かわいい。かわいそうだと思っても、自分に害があれば悪意を向け遠ざける。




 俺も人の事は言えないが。地球でも一回目でも引きこもりで周りを隔絶していたからな。




 俺の引きこもりはシェルター並ってな。




 いいから早く話し進めろって、ほしがりさんめ。




 いやっ、石投げないでくれ、俺が悪かったから。




 俺は布の服、サヤはワンピースと両手で抱えるほどいっぱいの食料品を買った。




 もちろん金は俺持ちで、早くも所持金がなくなったが、今日ばかりはいいだろう。




 今日はいい一日だ。




 死に戻り三回目で、十年後まで生きるのが目標だが、そんなことは後で考えよう。




 今日一日は、サヤに会えた嬉しい気持ちに浸っていたかった。




 お金がないから、寝床は馬小屋で寝ることが決定したのだが、もう少し後に知る話だった。

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