ひきこもり勇者の英雄談
御影友矢
プロローグ
ぼっ僕は何をやっているのだろうか。
ゴミが散らかって足の踏み場もない汚部屋で一人悶々と考える。
物心ついた頃から両親は共働きで仮面夫婦。幼少の頃の大半は児童養護施設にいた。衣食住はあったが、愛情はなかった。学校でもいじめられ、養護施設でも大人達は機械的だ。他の子供達ともあまり仲がよくない。
ぽっちゃり体型にまん丸と饅頭の様な顔。顔が良ければよってきたのだろうか分からない。ダイエットするも三日坊主、いじめられるストレスから痩せるどころか年々増えている。
それとも性格だろうか。内向的で極度の人見知りと田舎丸出しのなまり。緊張したらどもる癖がある。
規定の十八歳で家から飛び出した僕は、風呂なしトイレ共同の八畳一間のぼろいアパートに移り住み、自宅警備員をしながら、お金のない時は日雇いの仕事をして過ごした。
以来二十年間極力人との関わりがない状態で過ごしている。ニートではないが似たようなもので、ひきこもっている。ヘビーヒッキーだ。
ゲームとアニメと本が僕の友達だ。
アニメを見ながら携帯ゲームをし腹をボリボリと掻いているのが今の状態だ。
ほんと何やっているんだか。
我に返ると虚しくなる。
アニメやラノベやマンガみたいに誰かと出会い、恋をして、付き合って結婚するのを夢見ていた。
オタクに恋は難しい。結局は顔だ。僕みたいな心も体もブサイクはお呼びじゃない。
コーラに手をのばすと無くなっていて。
「ナイスですねぇ~」
丁度アニメのヒロインからそんな言葉が聞こえ、深い溜息をはき、スエットのままアパートを出た。
時刻は八時、近所の激安スーパーから徒歩五分だ。閉店時間は九時でまだまだ時間に余裕があるが、早くすませたかったので小走りだ。
道行く人からの不快な視線から逃げるようにスーパーに到着する。
時間が遅いため人はまばらだ。
ラッキー、半額の弁当が残ってる。
半額に表示なれるのは大体七時ぐらい。この時間にはいつも無くなっている場合が多い。
少し嬉しい気持ちのまま目的のコーラもかごに入れレジに移動する。
レジは3つあり、今日の店員は二十代チャラ男、高校生ぐらいの目つきのきつい女の子、四十代の大人しそうな中年の男。
その内、四十代の男を選ぶ。
頻繁に行くため、どのレジ店員とも一度は対応してもらったことはある。二十代の男の蔑んだ目、十代女の子の嫌悪を隠そうともしない目つき。そんなこと思ってもないかもしれないが、精神的にきつい。だから、僕と似たような感じの中年男に勝手にシンパシーを感じていて、その店員がいるときはそこに行くようにしていた。
店員さんも、僕に気づいたのか『どうも』といった感じで会釈してくる。
僕も軽く頭を下げ、レジを通し金額を支払う時、
辺り一面が光で溢れた。
なっなっなにが起こってるんだ。
僕は眩しい光に目を瞑りながらパニックに陥っていた。
と、同時に若干の期待もしている。
もしかしたら異世界に転生するのでわないかと。
僕は異世界に行きたかった。異世界に行く方法を検索し色々試したが駄目だった。
ほんとに行けたらきっと大きな騒ぎになっている。それで行けるのは小説の中だけで、リアルでは不可能だと。僕は落胆しながらそう思うことにした。
でも、もし異世界に行けたなら、変わろう。引っ込み思案で内向的だった性格を、半ニートで、ぽっちゃりな体型を。
眩しかった光が収まり、おっかなびっくりでおそるおそる目を開けた。
目の前の光景は三大定番の一つ、森の中だった。
「うぉぉぉぉぉ」
オークの雄叫びの如く俺は叫ぶ。
それは夢にまで見た胃世界の光景だった。
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