2024/10/11「あるときの気のせいはいつ覚めるのか」

深夜の缶コーヒーが美味しいのも、サービスエリアのラーメンが美味しいのも、過去の恋愛が煌めいて見えるのも、今の友情が心地いいのも、夏祭りの夜空がやけに綺麗なのも、九割くらいは気のせいに過ぎないのだと思うのだけれど、そんな気のせいを搔き集めることで、僕たちは初めて「人生は素晴らしい」という気のせいを獲得できるのかもしれない。

ただ、1%の幸せを100個集めれば100%の幸せになるかというとそんな簡単な話では無くて、結局のところそれは「100個の1%の幸せ」でしかなく、たとえ5%や10%の幸せを一生かけてこつこつ積み重ねたところで、100%の幸せについては何も知ることができずに終わるのではないか、という漠然とした恐怖もある。

それでも、1%の幸せな気のせいをずっと大事に持っているのはただそれがどうしようもなく綺麗なものだからだ。

いや、それすらも気のせいなのかもしれない。でもこの気のせいにはまだ気づきたくない。

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