2024/10/09 「光」


僕は黒い海の上で船を漕いでいる。


東にこの世界で唯一まだ沈んでない建物があるらしいのだ。


そこを目指して僕はただひたすらにオールで黒い水をかいている。世界を滅ぼしたこの黒い海の原因は僕だ。家の庭に気まぐれで穴を掘っていたらそこが油田だったのだ。真っ黒な液体が流れ出す中、僕は倉庫にあったボートに乗って生き残った。


だが、世界は黒い海に沈んでしまったのだ。今、宇宙から地球を見たならきっと真っ黒で宇宙の中でどこに地球があるかわからなくなっているだろう。


宇宙人は地球が無くなったと思っているかもしれない。


宇宙から無くなって地球の中でも無くなったものは沢山ある。


今日はその一つをこの地球にもう一度見せてやろうと思うのだ。


僕は東にある白い塔の上で一本の線香花火に火をつける。


パチパチと音を立てながら輝く線香花火は黒い海に反射してより幻想的だ。


でも、そろそろ終わる。


線香花火はいつもそうだ。綺麗に咲き誇ったかと思えば最後には一滴の涙を落として散る。


いつもより大粒の涙が黒い海に落ちていく。


これで地球は見つかるかな。

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