Section.1 貴族令嬢との出会い
第1節
青年――ノア・シネルは
「まさか外出先で
ノアは今日の朝に新調した
数日前、
鞄だけでなく仕事道具すら灰燼と化してしまったのだから
燈屋の仕事道具は主に二種類だ。
一つは魂の状態を見る
もう一つは魂の調整をする宝具と呼ばれる特殊な機器。
これが馬鹿みたいに高い。
一つ買うのに白亜の
故に魂灯のメンテナンスには非常に金がかかる。
そして、ノアは頭の中で今月の収入と支出の計算をしながら知り合いの店へと足を踏み入れる。
「いらっしゃ…」
「なんだよ?」
「いや、なんでも。それより人間のお
「この島に人間なんか来るものなのか?」
「さあ?
「そもそも船に乗れるのか?」
「私に聞かれても知らないわよ」
「ま、良いか」
「で、何の用よ」
「ああ、そうだ。このフレーム、直せるか?」
ノアは鞄からバキバキに割れたフレームを取り出してカウンターで
女――マーヤは近くに置いてあったモノクルを付けてフレームを見る。
「これ、素材が手に入らないわよ」
「?」
「ガラスの部分は
「いたって普通の金属製のフレームに見えるが」
「…これでわかる?」
マーヤは
「…アレスチレン鉱石か」
「ええ。上から鉄とカレフステンで塗装してるから分かりにくいけど」
「材料があればどうにかなりそうか?」
「出来なくは無いわよ」
「…何が言いたい?」
「これの
「あ…」
そう、アレスチレン鉱石とは非常に硬く、
それゆえに数も出回らず、加工できる職人も少ないのだ。
「ね?無理よ、現存技術じゃ」
「…そういうことか」
「ええ。アイツなら確実よ」
「ありがと。助かった。それと仮フレームもらえるか?」
「仮フレーム?」
「これの魂の部分を入れてやらないと」
「ああ。うちの弟子が作った試作品なら仮フレームには丁度良いと思うけど」
「見せてもらっても?」
「良いわよ、自由に見なさい」
マーヤはノアを
そこでは一人の少女がフレームの加工をしていた。
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