第135話

黒川「結婚かぁ…」


結婚とは1番縁遠そうな男がしんみりと呟く


武本「結婚か…」


逆に1番近そうな男も呟く

…呟くだけでなく彼女の方をチラリと見る

彼女の方も気付き、頬を赤く染める


何イチャついとんねんボケがぁ!!

などと叫ぶ事はせず

大きく溜息を吐く


桜井「それなんだけど、瑠奈ちゃんはどうやら北海道で陰陽師やってるみたいだよ。そこで0から始める為に連絡手段は全部絶ってるみたい…結婚、してるかは分かんないや」


どうやら桜井のとこに手紙が届いたらしい

元気にやってるならいい

でもどうせなら次皆で集まる時があったら、彼女も居たら嬉しいな


その後は近況報告や今のランクの話、黒川から休日出勤の話を聞いたりと陰陽師らしい会話をした


その話の中であいつの話題は出ない


というか意図的に皆回避している

あの黒川でさえも



あの事件を機におかしくなってしまったあいつ

そうなる理由も気持ちだって少しは分かる

それでもあいつがそんな事になるなんて思ってもいなかった


だってあいつは強くて優しくて、俺たちの中心だったから


あの日以来顔を見ていない

でもちゃんと卒業した事は聞いた

進路は教えて貰えなかった

そもそも陰陽師関連の仕事についたかどうかも


それでも俺たちは会いたかった

一言でいいから顔を見て話したかった

苦しんでいるなら力になりたかった


それは皆同じ気持ちだった

だからこうしてたまに情報交換をするようになった


陰陽会に掛け合ったり、調べてもらったりもした

でも答えはいつも同じ

「そのような人物の情報はございません」

まるで意図的に情報を消されているかのような…


だっておかしいだろ?陰陽免許を取って、全国大会に出るほどの実力を持ったやつだぞ?

陰陽会が手放す筈がない


そう思い込んでいた

もしかすると全てを忘れる為に普通の生活をしているかもしれないのに…


1度全国の陰陽会の支部を調べれてみればいい

そうしたら結果が分かるだろ?

でもしない、忙しいから…


本当は違う

いなかったら怖いから


学生の頃と違い、月日はあっという間に過ぎた

1年以上何も無いと、自然に誰もあいつの事を口にする事は無くなった


いつからかお互いの近況と顔見せをする会に変わってしまった

そんなのやる意味ないじゃん?と思うかもしれない


俺もそう思う

でもこうして集まるのは…

もしかすると!少しでも!噂でも!

そんな思いがあるから


結局何も変わらない、いつもの会が終わった

変わったと言えば何人かがお酒を飲むようになったくらい


こうやって少しずつ大人になって

いつかあいつの事を忘れてしまうんだろうか?


そんな事を考える自分が嫌になった

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