第127話

あの時の映像が脳にこびりついて離れない


辺り一面に倒れてる人

血塗れの会場


そこで1人立つ俺の姿


まるで俺が皆殺したみたいな…


そんな事はない!

分かってるよ!!

それでも瞼を閉じると鮮明に思い浮かぶ

見る度に吐き気がする

吐いても吐いても止まらない

吐くものがなくなって胃液だけが流れてくる

……すっぱい


寮に戻ったらすぐ布団に入る

日中の疲労からすぐに気を失うように眠る


「タスケテ」「イタイ」「クルシイ」「タスケテ」「オマエガミンナヲ…」「イタイ!イタイ!」「オマエガコロシタ!」「タスケテ」


藤森「トモダチヤナカッタト…?」


血塗れの藤森が俺の腕を掴む


「ああああぁぁぁぁ!!」


いつも、いつもこうだ…

寝ても地獄、起きてても地獄


皆が心配してくれてるのも分かってる

色々してくれてるのも分かってる


でもどうしようもないだろ?

俺が見たくて見てる訳じゃないだよ!!


そんな日々が続いたある日藤原に呼び出された


何かを言ってくる

でも上手く聞こえない


だって頭の中で皆が叫んでるから


適当に返事をするがそれを許せなかったのかさらに勢いが増す


だが藤原の声が脳内の映像と混ざりぐちゃぐちゃになる


「もういいって言ってんだろ!!誰にも俺の気持ちなんか分かんねぇよ!!」


もうほっといて欲しい

そんな気持ちが爆発して俺は叫んだ


藤原は「そう…」とだけ呟いてその場を去った


1人になりたい…その日から俺は引きこもるようになった

担任には体調不良と説明したらすんなり許してもらえた

ただ卒業する為にはテストのは一定以上の点が必要だと言われた

それくらいならなんとかなった


こういう時寮だと食事とかに困りそうだが、そこは朝と夜に食事を運んできてくれた

食堂には行けそうになかったから正直かなり助かった


それから何ヶ月か経った

引きこもるというのは今の俺には合っていたようで秋頃には夢を見る事は少なくなっていた

これならまた登校出来るかもしれない!!



朝起きて制服に袖を通した

朝日がいつもより眩しく感じた

久々にみんなに会える!

そんな事にワクワクしながら玄関の扉を開けた


ふと制服姿の誰かの姿が目に入った

そりゃあここは寮だから誰かしらはいるだろう

それは分かってた、分かってたはずなのに体が震える

呼吸が上手く出来ない

これってあれだ、過呼吸ってやつか

脳内にはここ最近見ていなかったあの時の映像が蘇る


その日からテレビやスマホでも「学生」や「学校」などのあの時を連想させる言葉やものを見ると発作が起こるようになった


よくなっていたと思っていたトラウマは最悪の形へと変化していた

結局俺は卒業するその日まで引きこもり続けた

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