第50話

あれから1週間経った

進歩したか?と言われると答えはノーだろう

たしかにスピードに対する慣れで前よりは対処出来る様になった

でもそれはあくまで”慣れ”であって進歩や技術の習得が出来た訳ではない


というかそもそもの課題がおかしいのだ

360°どこからくるか分からない物を対応するなんて人間のやることでは無い

後ろに目がついてても出来るかどうか…


今日も同じように飛んでくる霊弾を霊弾で相殺していく

この1週間で分かった事と言えば、俺の霊弾の威力がおっさんの霊弾より少し弱い場合…おっさんの霊弾は俺の霊弾を弾いてそのまま向かってくる

逆に俺の霊弾の方が少し強い場合…ぶつかって弾ける

原理も分からないし意味も分からない

おっさんに聞いても教えてくれない

だから俺は少し強めの霊弾を撃ち続けるしかないのだ

そうするとすぐ霊力が尽きる

八方塞がりとはこの事か…


修行途中だが俺の心は折れかけていた

もうどうでもいいや…

諦めようと目を瞑った


するとどうだろう?


自分が立っている右斜め後方に”何か”があるのを感じる


その”何か”は速いスピードで俺に向かってくる

言わなくてもわかるだろうが、霊弾だ

しかも直接見ていた時よりも霊力の大きさがハッキリと分かった

試しにそれと同じだけの霊力を込めて霊弾を放つ


俺が放った霊弾も向かってくる霊弾と同じように感じる事が出来た

そしてすぐ失敗した事に気付く

俺の霊弾の方が霊力が少ないのだ


そりゃそうだろう

俺はまだ霊力を使い始めてからそんなに経ってないんだからそんな精密な霊力コントロールなんて出来る訳がない

だがそんな事は今更だ、どうでもいい

いや違うな

これからどうとでも出来る!


それから1週間、まるで何かに取り憑かれたかのように修行を続けた


最初は自分を中心とした半径20mくらいのものしか感知出来なかったが、この1週間で200mくらいまで広げる事が出来た


しかも目を瞑った状態でしか感知出来なかったのが、目を開いた状態でも感知出来るようになった

そうすると漠然と”何か”があるとしか思ってなかった物が感覚と視覚情報の2つで捉えることが出来た


霊弾、障壁など技として放出された霊力は青色の霊力が塊として見えていてほぼ通常の視覚と変わらない

霊装、集撃などの体に纏うタイプは霊力が黄色に見える

しかも実際の視覚とは違い込められた霊力によって纏うオーラ?の大きさが変わる


そして1番驚いたのは術者の保有霊力?が見えるようになった事だ

それは術者のお腹の辺りにあって霊力が赤色に見える

見た目は皆、同じ大きさなんだけど感覚的に多いか少ないかが分かる

と言ってもおっさんと俺のしか見てないんだけど…

ただ炎のように揺らめいていて霊力を使えば使うほど萎んでいく

技毎の霊力消費量や現在の霊力残量が分かるようになった

これはマジでデカい


多分…と言うか絶対おっさんも使えるんだろうけど、この能力を「霊力センサー」と名付けた


霊力センサーを使えるようになってから修行はドンドン上達していった

合わせて霊力コントロールも身に付いていった


対して組手はそれほど進歩しなかった

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