第27話

何故馬鹿2人がこんなに必死に勉強しているかと言うと…

陰陽高校の夏休みは7月の20日頃から8月中で、8月1日から20日の間は家への一時帰宅が許されるのだが赤点を取った生徒は8月1日から2週間補習となる

しかもその補習はテストがあってそれを何点以上取れば終了とかいうものでもなく、2週間の間ひたすら一学期にやった範囲を復習し続けるという、生徒にも先生にも共に”地獄”の補習となっている


そんな訳で陰陽高校は全国的に見ても赤点を取る生徒の数が極端に低く学力もそれなりの水準を保っているのだ

ちなみに赤点は生徒数が少ないので平均点の半分とかではなく全教科一律40点である


勿論俺たち以外の1年も赤点を取りたい奴などいる訳もなく必死に勉強していた


男装女子生徒、桜井もその内の1人だった

だがご存知の通り桜井の頭はかなり悪い(※第18話参照)

そんな彼女が1人で勉強した所でたかが知れている

そんな事は桜井自身、百も承知だった



いつもの4人が最近放課後の特訓をやってないみたいだけど一体どうしたんだろう?

喧嘩でもしたんだろうか?


そう思っていたら、放課後に教室に集まって勉強会をしているのを見付けた


しかも参加者に阿部くんと藤原さんがいる

あの2人頭いいんだよなぁ…

どうやら杉山くんと黒川くんが2人に勉強を教わってるようだ

黒川くんまでいるんだ…

私も参加したい〜!!


でも1人で声を掛ける勇気はない

一緒に参加してくれそうな人は…

中村さんは…うん、無理

まず声を掛けるのが無理だ、ギャル怖い

武本くんは絶対ない

花村さん…

う〜ん、悪い人ではないんだけど

あの事件の時の人格の変わりようがなぁ…

と言っても他の2人に比べたら何倍もまし

なによりこのままだと私の夏休みが無くなってしまう!!


桜井「あ、あのさぁ花村さん?」


花村「……」


花村さんは顔だけこっちに向けた


桜井「テスト勉強どんな感じ?」


花村「……?」


数秒動かなかったが急に首を横に傾げた

一言も喋らんのかーい!!


桜井「んぁー、えっとね。放課後、皆が勉強会してるらしくて……それでね、僕も入りたいんだけど言う勇気がなくて…一緒に言ってくれない?」


花村「分かった」


対面で話してるのに危うく聞き逃すくらいの小さな声で返事をしてくれた

なんにせよこれでいけるぞ!


桜井「じゃ、じゃあ一緒に付いてきてくれるかな?」


そう言うと花村さんは立ち上がって私の手を握った


桜井「ふぇっ!?」


いきなり手を掴まれたので変な声が出てしまった

花村さんの方を見たが前髪のせいで表情が見えない

仕方ないこのまま行くか…


丁度阿部くんの席に杉山くんと黒川くんが集まっていたのでチャンス!


桜井「あ、あの〜」


杉山「ん?桜井どしたん?俺らに用?」


黒川「花村さんもいんじゃん。てか手繋いでる?2人ってそういう感じなん〜?」


茶化すように言ってきた、けど黒川くんに言われるとなんだかムカつく


桜井「これは違うの!花村さんがっ!」


阿部「黒川やめろって。で?なんの用だった?」


ついカッとなって反論してしまったが阿部くんが上手く話題を変えてくれた


桜井「んーっとね?君達放課後勉強会してるじゃん?そこに僕達も参加させてもらえないかなーって?」


花村「そうなの」


黒川「なるほどね〜!人数多い方が楽しいだろ!いんじゃね?」


杉山「お前は教えてもらう側だろうがっ!」


杉山くんが黒川くんにチョップをする

うわー!いいなこういう感じ!羨ましー!


黒川「そうでしたっ!で、どうする?あべちゃん」


振られた阿部くんは考えるように上を見る


阿部「ま!いっか!そんなら得意な人が苦手な人に教えるって感じにしよっか黒川以外は得意科目あるでしょ」


黒川「ぐっ!さり気にディスられた…」


阿部「フハハハ!で、どうかな?藤原」


藤原「あんたらがいいならいんじゃない?私は勉強が目的じゃないし…」


勉強会なのに勉強が目的じゃないってどういう事なんだろう…


とりあえず参加させて貰えるみたいだから良かったー!

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