入学編ー閑話
私の名前は
今年陰陽高校岡山支部に入学したピチピチのJKよ
と、言っても普通のJKのように青春を謳歌する事はないんだけど
私の実家”藤原”と言えば京都の陰陽師の名家
性別は関係なく藤原家に生まれた者は幼い頃から強い陰陽師になる為の教育を受ける
そんな私が何故岡山みたいな何も無い田舎に来たのか、と理由は話すと長くなるので割愛する
理由の1つは鳳凰院様が居るから
顔がかっこいいのは勿論だけど、陰陽師としても天才
なのに驕ったりしないし誰にでも優しい
まるで漫画の中の主人公のよう
鳳凰院様を好きにならない女の子なんているんだろうか?
何故私が性格まで知っているかと言うと、鳳凰院家も陰陽師としては名家なので小さい頃から偶に交流があったのだ
割と歳が近いと言う事もあってよく遊んで貰ってた
鳳凰院様はその頃から既に陰陽術の天才として注目されてた、本当に凄いと思う
今では呼ぶ事も出来ない存在となってしまったが、昔は「隼人お兄ちゃん」と呼んで慕っていた
そんな鳳凰院様を自分の家に取り込みたい者は多く、うちの家もそう
父は鳳凰院様を誘惑し優秀な子供を作るのが私の役目だと言う
役目など知った事ではないが、私自身鳳凰院様の事が好きなのでなんの問題もない
自分で言うのはなんだが、私は可愛いと思う
性格もいいし霊力だって高い
3年間もあれば誰だって私に恋するだろう
だから鳳凰院様だってきっと…
それよりも目先の問題はさっきの戦いだ
正直心をへし折られた
いや、違う
天狗になっていた鼻をへし折られたのだ
霊力は中級だし、陰陽術だってある程度やればすぐ使える
鳳凰院様には及ばないが私だって充分天才だと驕っていた
家でも訓練をしていたし、こんな片田舎の学生など敵ではないと思っていた
下手したら先生とだって実力が拮抗してるんじゃないか?なんて思ってた
とんだ笑いものだ
何が拮抗だ!何が天才だ?
霊力が自分より下の先生に手加減までされて完封された
井の中の蛙大海を知らずとはよく言ったもので、今の私にピッタリの言葉だろう
先生に負けたのだからそこまでショックを受ける必要なんてないだろ?
普通の人はそう思うのかもしれない
これから教わって見返してやればいいだろ?
そうかもしれない
でもまるで私が過ごしてきた15年全てを否定されたような気持ちになった
阿部「なぁ藤原。初めて霊力を使った時の事覚えてるか?」
項垂れている私に声を掛けた彼の名前は阿部正晴
この学校で出来た最初の友達だ
彼はつい先日まで陰陽師とは全く違う世界で生きてきたらしい
何故か鳳凰院様に目を付けられて2日連続で呼び出されている
羨ましい〜!!
今では仲良しだが、彼との出会いは最悪だった
鳳凰院様への溢れる想いから暴走してしまった私が迷惑を掛けた
なのに彼は嫌な顔せず…
してたかしら…?まぁいいわ
快く対応してくれた
その上友達になろうと言ってくれた
正直嬉しかった
「なんでそんなにやる気なの?」
質問にも答えず私は気付いたらそんな事を聞いていた
阿部「ん〜なんだろうな。俺が青春を謳歌する為に必要だから?」
「はぁ?」
全く予想外の返答に思わず声が出た
「え?それだけ?」
阿部「おう!」
「それだけで頑張れるの?だってあんた今…言ったら何も無いじゃない!頑張ったって報われる保証もないのに…」
阿部「確かにそう。でも逆にこれ以上落ちようがないじゃん?なら後は登るだけだろ」
なんだろうか?大した言葉ではないが、その言葉が凄くスっと心に染みた
「登るだけ…か」
多分他の誰かが同じ事を言っても何も感じなかったと思う
他の誰でもない、今この学校で1番底辺の彼が言ったからこそ私の心に響いた
私の友達はなんて気持ちのいい奴なんだろう
それなら友達の私だって頑張れるはずだろう
そう思えた
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