第13話【子爵令嬢フローラの実力①】

 ――時は少しだけ遡る。


 アリオンの教えを受けたフローラは筆記試験を難なくこなし、実技試験の会場となる訓練場に向かっていた。その時事件は起こった。


 ドカドカドカ


 突然の爆発音に駆けつけたフローラの前には実技試験を受ける為に訓練場に集まっていた子供達が大勢おり、その前に突然10人ばかりの男達が武器を手に雪崩込んできたのだ。


「きゃあ!」

「うわぁ!」

「なになに!?」

「助けてぇ!」


 一瞬にして辺りは子供達の悲鳴で騒然となった。


「やかましい! 騒ぐんじゃねぇガキども!」


「ひいっ!?」


 男達の怒鳴り声で場は一気に凍りついた。


「いいか? 余計な事をしゃべる奴はいらねぇからすぐに向こうへ送ってやるよ。おとなしくしてればすぐには殺さねぇ。まあ、何処か知らない国に売り飛ばされるか多額の身代金を頂いてから売り飛ばされるかだがな。ぎゃっはっは」


 男達のリーダーらしき男が近くにいた女の子の首に剣を当てて叫ぶ。


「おら! そこの教師ども! コイツらを殺されたくなければ地面に伏せて転がってるんだな! おっと魔法なんて唱える暇はやらねぇぜ、怪しい動きがあればこの小娘の首が先に落ちるからな」


「ぐっ!」


「いったいどうすれば……」


 護衛や教師達も子供達を、助けようと必死で考えるが動ける者は居なかった。


「いやぁ! 助けて!」


 緊張の限界が来ていた人質となっていた女の子が叫んだ。


「このガキが! 騒ぐんじゃねぇ! 死にてぇのか!」


 男達のリーダーらしき男が女の子を怒鳴りつける。


「!?」


 あまりの緊張感に耐えられなかった女の子は気を失って、その場に倒れ込んだ。


「この役立たずがぁ!」


 憤怒した男は女の子を斬りつけようと反射的に剣を振り上げた。


「サウンドボム・シーケンス・ビッグホーン」


 その時、何処からか美しい魔法詠唱の声が流れるように響いた。


ボム! ボム!


「ぐわぁっ!? み、耳がぁ!」


 剣を振り上げた男は突然、両方の耳のそばで鳴った爆発音に鼓膜を破壊され剣を落として両手で耳を抑え、その場でのたうち回った。


「リーダー!? お前ら何をしやがった? 抵抗したらコイツらの命はないと言ったはずだぞ!」


 しかし、周りをみても抵抗出来そうな大人達は皆地面に伏せており、男達を攻撃出来そうな者は見当たらなかった。


「今すぐにその薄汚い手を離しなさい! さもなくば貴方達の存在を焼き尽くしてあげるわよ!」


 その声に盗賊達が声の主に注目するとそこにはひとりの女の子が男達に向かって凛とした態度で立っていた。

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