第9話【子爵様の定期テスト】
――そして一月がたち、ダグラム子爵が要望していた定期テストの日がやってきた。
「ではこれから学院の入試模試を始めますが、時間は60分間で7割正答で合格です。筆記模試終了後に実技になります」
屋敷の部屋ではダグラムが手配した学院の模擬試験問題と試験監督の配備まで準備しており、本番さながらの模擬試験が行われていた。
(やっぱり貴族はお金に余裕があるんだな。事前にこれだけ対策をとれるならば貴族の子息ばかり合格するのも当たり前の事だよな)
模試を受けるフローラ嬢を眺めながらそんな事を考えていた僕にダグラムが話しかけてきた。
「アリオン。一月経ったがこれまでフローラの家庭教師をしてみて実際のところ、娘の合格率はどのくらいだと思う?」
「そうですね。今の時点で考えて100%だと思います。初めこそ勉学で少々つまづく事もありましたが直ぐに修正されて問題なく及第点をクリア出来ると考えています」
僕は平然と答える。
「そうか。カイランからも報告は受けているし、娘からも順調だと聞いたがやはり自分の目で見たいと思ってな。それに最近、娘が明るく毎日を楽しそうにしているようだ。これからも頼んだぞ」
「分かりました。必ず期待にそう成果を出せるように致します」
そして、フローラは実技も問題なくこなして順調さを父に見せていた。
「素晴らしいな。さすが我が娘。これならば何処に出しても恥ずかしくない自慢の娘になる」
ダグラムはそう呟いて満足そうに頷いていた。
模擬試験の全てを終えたフローラはダグラムと僕の姿を見つけると笑顔で駆け寄ってきた。
「おとうさま。みててくれたのですか?私、結構出来るようになったでしょ?」
そう話すフローラからは不安な表情はいっさい見られずに終始笑顔が溢れていた。
「おお、フローラ。本当に見違えたぞ」
「えへへ」
そこへ、模擬試験の採点を終えたカイランが結果の資料を持って現れたので僕も一緒にみる事にした。
「全く問題になりません」
「えっ!?」
僕はその言葉に人一倍反応した。
「あっ、失礼。言い間違いました」
僕の焦った態度に気がついたカイランは慌てて言い直した。
「全く問題ありません。現時点でも十分な得点を獲得されていますので、これからさらに精進されるならば心配される必要は無いでしょう」
カイランの言葉に僕はホッと息を吐いてから言った。
「もう、脅かさないでください。心臓が止まるかと思いましたよ」
その言葉に僕以外の皆が笑っていた。
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