第8話【やる気を起こさせる方法】
――次の日の夕刻時。アリオンは学院の授業が終わると約束どおりフローラ嬢の家庭教師をするために子爵家を訪れていた。
門ではあの門番が不服そうな顔で僕を迎えてくれた。
「ダグラム様の許可が出たようなので通すがくれぐれも不審な行動は控えるように」
門番はそれだけ言うと門を開けて通してくれた。
(なんか引っかかる言い方だけど、まあ通してくれない訳じゃないからいいか)
僕は内心苦笑いをしながら屋敷のドアを叩いた。
「お待ちしておりました。フローラお嬢様がお部屋でお待ちになっております。侍女は既に部屋に待機していますのでそのまま勉強に入られて結構です」
カイランにそう説明されて僕は彼女の部屋のドアを叩いた。
「お待ちしてましたわ。今日は何を教えてくださるのかしら?」
部屋に入るとフローラ嬢がやる気満々で僕を迎えてくれた。
(やる気があるのはいい事だ)
「そうですね。では机上の問題からやってみましょうか。お嬢様の今の学力を知っておきたいですので」
「えー! 魔法の勉強では無いのですか?」
フローラ嬢があからさまに嫌そうな顔をした。
「まあまあ、そう言わずに。それにこの問題を解けるようになると出来る魔法が増える可能性があるんですよ」
「えっ!? 本当なの? それってどんな魔法? 早く教えなさいよ!」
(まあ上手く誘導してやるか)
「ではこのテキストを解いてみてください。その間に僕は次に教える魔法の準備を済ませておきますので」
フローラ嬢は後で待っている魔法講義ごほうびの為に必死でテキストに取り組んでいった。
「――出来ました!アリオンみてみてこれで合ってるかな?」
フローラ嬢は終わった用紙を僕に見せて答え合わせを促してきたので僕はざっと確認してみた。
「ふむ。なかなかの出来ですが、こことこことここが少々おかしな解答になっているようですね。この場合はこうしておけばこうなる訳です」
「ふーん。アリオンって私よりひとつ上なだけよね?なんでそんなに物知りなの?」
「そうですね。世の中の事を知りたいと思ったら勉学を極めるのが一番効率が良かったからでしょうか」
「むー。それって答えになってるの?」
「さあ、どうでしょうか? ですがそのおかげでお嬢様の家庭教師になれたので無駄ではなかったのではないでしょう」
「そんな答えじゃ騙されないからね。でもいいわ、次は魔法を教えてくれるのでしょう? 今日は何かしらね」
フローラ嬢の機嫌も良くなったようなので今日も害のない魔法を教える事にした。
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