異世界転生させようとしたら友人に止められた件

椿原

意地悪っ!

 朝。本日の天気は良くも悪くも曇り、といった所である。普段通りとは行かないが、友人との待ち合わせ時刻には間に合ったようだ。


 「最近、遅刻しまくりか、早く来すぎかで困ってたから丁度ええ感じやわ」


だなんて独り言は、電車の発車音に掻き消された。


 改札を出て、コンビニの店先で待機しようとした。しかし、今日はやけに人が多い。いつもの特等席には数人の女子高校生が居座っていた。仕方ない、友人が来た時にわかりにくいが、反対側で待つとしよう。

 

「……遅くね?」

遅れるときは必ず連絡があるのに今日はない。不安になりつつ改札上の電子降板を見る。……思いっきり遅延してる。

 ため息を吐き、まぁもうすぐくるだろうと思いながら、カーディガンを鞄にぶち込む。

 頭上からキィーと嫌な金属音がした。そして数秒後、ガタゴトと線路を通過する音が聞こえた。そろそろ来るか。人混みの中、ゆらゆらとポニーテールが揺れているのが見える。友人、外岡とのおかみずきだ。こちらに気づき、寝惚けた様子で彼女は「おはよー、ののちゃん」と欠伸をしながらやってくる。満員電車だったのか、若干髪が乱れているのを気にしているようだ。


 集合できたところで、駅のコンコースを抜ける。やはり、遅延していただけあってか、近隣に高校が数件あるからか、人が多く感じる。名目上、都会と言えどここはまだ過疎地域でもある。だからこそ余計に多い。


 ふと、思った。


 「ここにいる何人か異世界転生しても、もーまんたいでは問題なくねーか……?」


 そう思った一秒後に横から笑いが入る。声に出ていたようで、咄嗟に口を押さえたが、手遅れのようだ。なんともまぁ、はずかしい。


 「んな、どこぞのなろう系小説じゃないんやから」


とのツッコミを受け、はは……と苦笑する。そして、またふと、今度は二人でピタリと止まる。

 きっと考えていることは一緒だろう。目を、声を合わせて言う。


 「これ、一話だけ書けるじゃん」


 なんて言う、馬鹿げた会話から始まる“今日”も、素敵だろうな。曇った空が晴れやかに感じた。

 授業は七限、しかも月曜日。憂鬱でしかない今日が、色付くかのような、そんな気がしたから、もう少し色を加えて、この始まりを絞めることとしよう。

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異世界転生させようとしたら友人に止められた件 椿原 @Tubaki_0470

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