第5話 凛水・お節介
「ねぇ山脇さん、山脇さんも一緒に話そうよ!」
話しかけてくれる人たち。
さっき山田さんとやらにも話しかけられた。
わかってないなぁ、私に話すなんてことができるわけがないじゃないか。
「いいってば。ほっといてよ」
私はポニーテールの女の子を一瞥してそう言った。
我ながらすごい不愛想だ。
うーん、ちょっと言い方キツすぎたかな。
まぁキツくてもいいや。クラスメイトと仲良くなる義務はないから。それに私は友達が欲しいわけじゃないし。
それなら、わざわざみんなに気を遣う必要もないに決まってる。
「何その言い方!」
そうだね、怒るのはごもっともだけど私はそういう人なんだよ。
少し申し訳なさを感じながら窓の外へと目を移した。
それでもやっぱり気になってちらりと輪の方を見やると、一番最初に輪の中心の山田さんという女の子に話しかけられた男の子が目についた。
長めの前髪のせいで目のあたりがよくわからないけど、なんだか目が離せない魅力がある。
なんでだろう。
気づいた時には視線が山中君の方に移動してしまう。
って、もしかしてイケメンにときめいてるってやつなのか?こんな地味女子とは世界が違うのに。
咳払いしてまた窓の外へと顔を戻す。
雲ひとつない青空を飛んでいく、小さな鳥たち。
ふと、窓にうつる自分の顔が見えた。
変わりたい思いで買った丸メガネ。
馬鹿だ。私が変われるわけがないのに。
別に今は変わりたいとは思わない。この生活で十分だ。
目立たない、教室の隅でいつも外を眺める小さな存在。
誰にも迷惑がかからないし、周りを気遣う義務もない。
楽じゃないか。
このまま周りに認識されずに生きていっても、私は何も思わないんだから。
……多分。
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「さようなら!」
帰りのあいさつ。
一斉に発されるみんなの声と同時に、教室がざわめきだす。
一緒に帰る人もいないのでとりあえず帰ろうと立ち上がった私の肩に、何かが触れた。
はっと振り向くと、ロングヘアの女の子。
「やーまわきさん!」
「何か用?」
「一緒に帰ろうよ!」
懲りないなぁ。
いいって言ったのに。
「ちょっと玲香ー。そんな奴誘っても来ないし来ても面白くないでしょ。ほっとけば?」
「そんなこと言っちゃダメだよ!ほら、山中君も言ってたでしょ、誘わないと本人の意思はわかんないと思うよ」
よし、この間に逃げよう。
そそくさと校章入りのバッグを肩にかけ、教室を出る。
一日でこんなに教室の人間関係を築き上げるなんて、山田玲香は何者なんだろう。
「待ってよ、山脇さぁぁぁん!!」
後ろから声がした。
まだ追いかけてくるのか……さすがにしつこいぞ。
追いつかれる前に早く家に帰ろう。
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