第21話 CKvsMJ
数合の打ち合いで、先ほどまで無傷だったMJの大盾に僅かばかりの傷が刻み込まれる。出力の上がったCKの一撃は重く、先ほどまで不動に近かったMJを大きく揺り動かす。それでも、ただの打ち合いではMJを下すには至らなかった。
このままでは埒が明かない。それはミィもCKも同意見だった。このような結論が出ていてもCKが出来るのはミィに提案を持ちかけるだけ。
『このままでは決着がつきません』
CKの言葉にミィは大きく頷くと決意を込め凛と命じた。
「最大出力で
『───!!』
一瞬、CKが何かを言おうとするもそれは音にならなかった。クロムならすぐさま怒鳴り声と共に反対していただろう。しかし、CKは否定しない。否定できない。
MJと一進一退の討ち合いは続く。沈黙の数秒の間。
「大丈夫、あたしは死なない。約束守ってもらうまで死んでたまるもんですか。あたしはCKを信じてる。だからCKもあたしを信じて」
微笑むミィに返ってきた無機質な機械音声はどことなく悲し気なものを帯びていた。
『貴女達、
「嘘じゃないから」
『結果、反古されればそれは嘘と変わりありません』
「約束するから。指切り」
片手でしっかり操縦桿を握りながらミィは機内カメラに向かって小指を立てた。もの言いたげな沈黙。ため息を吐いているかのような間の後CKは了承の言葉を述べた。
『……了解しました。
CKが発動ワードを言うと同時に9体の銀青の機兵がその場に出現し、一斉に9方向からMJに切りかかる。これには流石にMJも驚きの声を上げた。
『亡霊を9体だと!バカな!主でもない生体兵器にこんなまねが出来るというのか』
物量に負け防戦一方になるもまだMJの膝は折れない。
9体の分体相手でもわずかなすきを見つけてはMJの反撃がCKに襲い掛かる。10、20と切り結ぶ中、かはっと大きく咳き込むとミィは口から鮮血が飛び散ちらせた。それと同時に不意に銀青の一体がブレードを振り下ろそうとして動きを鈍らせる。
そのすきを逃さず、MJのバトルアックスは一体を横薙ぎに切り倒し消滅させた。残り8体。
ぐっと口元の血をぬぐうと不敵にミィはCKに笑って見せた。
「これくらい平気。一気に畳みかかけるよ」
『了解、
本来戦乙女は9人。しかし、銀青の機兵は8体。数の違いに問題などないと8体の機兵は整然と横に列をなし青白い光を纏い倍ほどの長さに伸びたブレードを構えると一斉にMJに切りかかった。
『我が盾を貫けるものなし!ハードロックウォール発動!!』
ただでさえ堅牢なMJの両の大盾はビームコーティングで覆われ8人の戦乙女と化した銀青の機兵のブレードの一撃を耐え抜いた。しかし、衝撃に耐えきれずその銀緑の巨躯は宙を舞う。ドォォンと地響きのような音をたててMJは仰向けに地に叩きつけられ、床に大穴を作り上げた。
盾はひび割れ、バトルアックスの刃も欠け、その身も既にいたる所に亀裂や欠損を受けている。人で言うなら満身創痍。それでも尚MJは腕を伸ばし立ち上がろうとしていた。
騎行を終え、8体の機兵が姿を消すと同時にCKの両腕のブレードは畳まれ、片膝が地に着いた。コックピット内ではバッテリー不足を告げる赤いランプが点灯している。
鋼鉄の巨人たちは既に互いに限界を迎えていた。勝負は後一発で決まる。
ひび割れた盾とバトルアックスを投げ捨てるとMJはCKに殴りかかるのを小鹿のように震える両足で立ち上がりCKが迎え撃つ。
『これで終わりだ!!』
『負けてたまるかぁぁぁ!!』
MJの雄たけびとともに繰り出される巌のような拳がCKに迫る。暴風を纏った拳がCKの横っ面を霞めフェイスガードを砕く。
顔の損傷など気にせず、無機質ではない魂の籠ったCKの咆哮とともに振りかぶった拳はMJの顔面を捕え突き刺さる。
ナックルガードもなしに殴りつけたCKの右手の指は砕け開くことが出来なくなった。しかし、その代償に見合った結果は出ていた。
ゆっくりとMJの身体は後ろ向きに倒れ、ドサリと床を割り土煙をたてながら仰向けになる。既に高い天井を見上げる銀緑の巨躯の瞳には緑の輝きはなかった。
『……本機達の勝ちです』
「お疲れ様、CK」
CKの勝利宣言に自身も疲れた顔に笑みを浮かべながらミィがCKに労いの言葉をかけると安心したかのようにCKの電源が静かに落ちた。
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