第21話 スター軍団でも勝てない巨人軍

 2004年のプロ野球・巨人軍(ジャイアンツ)は200勝投手の堀内監督の新体制で投手王国再建をもくろんでいた。先発陣は豪華で上原、高橋、工藤、そして一昨年に12勝して15年振りに最優秀防御率2・22でタイトルホルダーとなったベテラン桑田の4本柱に新人の木佐貫がローテーションの谷間に投げる布陣。上原は後年、ストッパーとなって、サウスポーの高橋とともにメジャーリーガーとなったし、サウスポーの工藤は200勝投手になって引退後は福岡のホークスの監督となるのだが、それは10年以上も先のハナシ。

 今年は開幕から工藤が好調で、出だしの2か月で5勝。高橋1勝、木佐貫2勝、期待の上原は勝ったり負けたりで2勝、桑田も何度か先発したが晩年を迎えたか、まだ0勝だ。中継ぎとストッパーも豪華で勝ちパターンは後にメジャーリーガーになった岡島、元メジャーのシコースキー、昨年28セーブの河原がストッパーだったが、ここまで不調でシコースキーと入れ替わることも多かった。

 さらに打撃陣も強力、何故か福岡ホークスから移籍してきた小久保が13本、ローズが19本、打てる強打者として10年後に400本塁打をマークする阿部が21本のホームランをかっ飛ばしていた。開幕から約2か月でこの本塁打数は驚異的、阿部は4月だけで16本も打っているのに、思ったほど勝てないのは何故なのだろう。高橋由伸は出遅れたが5本、そして待望の巨人のユニフォームを着て桑田とチームメートになっていた清原も晩年を迎えて4本、その清原とここ数年タイトルを競った元ヤクルトのペタジーニも松井の穴を埋めるべく巨人でチームメートになって6本。清原とペタジーニはファーストしか守れないので交互にしかスタメンになれないからだ。

 この年、結果として清原はホームラン10本目を6月5日までは絶好調だったが、それ以降はペタジーニがファーストで先発するようになって本塁打を量産し、ようやく清原が11本とした9月21日の時点でペタジーニは28本と大差に。

 どのチームでも4番が打てるバッターが勢揃いのスター軍団は、子供の頃からの巨人ファンの山鹿史矢にとってもドリームチームで、チームの勝ち負けを越えて見るのが楽しかった。

 結局、シーズン終了時にローズ45本、小久保41本、阿部33本、高橋30本、ペタジーニ29本という物凄さ。これだけではない、チームの1番と2番打者はセオリーなら四球でもボテボテ内野安打でも塁に出て送りバントなのだが、1番の仁志が28本、2番の清水が16本も打っており、とてもスモールペースボールとはほど遠いメジャーリーグ的なチームだったのも面白かったが、チーム的には優勝には届かず、堀内監督が目指した投手王国再建にも至らず、監督としての評価も高いとは言えなかったようだ。

 「やっぱり野球はピッチャーが点を取られ過ぎると勝てないし」

 「7点取られても8点取ればって思うけど、良いピッチャーが調子良いと、そうは打てないしね」

 「2000年代は桑田・清原が同じチームでタイトルを取るラストチャンスだったんだけどなあ、2001年は清原が絶好調だったのよ。この年は松井より目立ってたし、打点は122よ。松井は2002年が巨人でのラストイヤー50本ホームラン打ったけど打点は107だったのに」

 「122で打点王になれんかったって、その年の打点王、誰?」

 「清原を“無冠の帝王”にしたのはヤクルトの助っ人外国人ペタジーニよ。ホームラン39本、127打点で2冠王」

 「2002年は桑田が復活して12勝したけど、清原はファーストを江藤に譲る機会が多くて出番が半分に減ったし、2003年は2001年に打点王を盗られたペタジーニがヤクルトから移籍してきて、もともとヤクルトでファーストだったこともあり外野守備がザルだったんで、だんだんと出番が少なくなっていったんよ」

 「あれでしょ、ペタジーニって奥さんがかなり姉さん女房だったよね」

 「そうそう、25歳も年上だけどラブラブなんよ」

 「スター選手をお金にモノを言わせて集める球団の体質のおかげで待望の巨人に入れた清原も、結局はその球団の体質のせいで出場機会を失っていったのね」

 「まあ、だんだん力が衰えてきてるのもあるけどね」

 「来年も堀内監督だけど、期待のルーキー社会人ナンバーワン右腕の野間口が入るから上原の1年目ぐらいの活躍が期待出来るかもよ」

 「20勝は無理としても13勝くらいしてくれたらね~」

 父・史矢の巨人好きは長嶋・王が敬遠されまくっていた小学生時代かららしい。そのころは優勝するのが当たり前だったので、松井ラストイヤーの2002年以来、優勝しそうもない巨人が歯痒いのだった。

 年末恒例のテレビ特番「好プレー珍プレー」を楽しんだ後の親子野球談議でした。

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