第9話 インフルエンザの流行で受験対策ペースダウン
2004年1月6日
2000年以降の家庭用テレビゲームの主流はファミコンからプレステへ移行しており、RPGはファイナルファンタジーやドラゴンクエストの続編が大人気。ゲームボーイはアドバンスに進化しても依然としてポケモンの高人気は続いていた。
実況パワフルプロ野球10が夏にリリースされており、2003年の開幕データに更新されたものになっていたが、麻矢の1か月2000円のこづかいでは買えないまま、お正月のお年玉でやっと手に入れたのだった。
推薦受験日まであと3週間と迫った3学期の始業日、お年玉で買ったゲームの話題で盛り上がっているところへ担任の山田先生が入ってきて朝礼開始。2年1組が9人も風邪で休みの連絡があったことで流行のインフルエンザと思われるので明日から学級閉鎖になると言う。受験が間近なので手洗いとうがいを実行するように、とも付け加えた。
麻矢は放課後の静物デッサン特訓も大詰めにさしかかっていた。
「俺がデッサンの練習を始めたのは高校2年から、美大への進学を意識してからだよ」と美術部顧問の野上が話し始めた。
「高校で?」
「いや、冬休みに通った予備校で、高校は普通の進学校で美術部も普通の部活だったしな。高校で芸術コースに行けるの、いいねえ」
「ウカれば、ですけどね…」
野上の見立てでは、麻矢のデッサン力は中学のレベルを超えており、このまま順調に推薦受験日を迎えれば問題は無いと思っていたのだが、そうはうまくいかなかった。
3日後、いつもの時間に美術準備室に現れない麻矢。副部長で早くから桃園中央の芸術コースへの推薦受験を決めていた山本さんが「先生、部長はインフルエンザで今日から休んでいましたよ」~野上が恐れていたことが現実となってしまったが、山本さんら女子3人は野上先生をデッサン練習で独占できると喜んでいたようだった。
麻矢は悔しがっていた。朝、熱っぽいので体温を測ってもらうと38・7度もあって、内科クリニックではインフルエンザだから1週間は外出禁止だと言われるし、これまで入学から皆勤登校をしていた中学を不覚にもここまできて休むことになったからだ。「(受験のために)ちゃんと予防接種を2回もしたのに、どうして?」と不本意この上なかったが、不思議とダルさは無く高熱のためかテンションも高めだった。ただ異様に喉がかわくのでお気に入りのファイバードリンクをがぶ飲みしていたら腹痛も併発、お通じが良くなりすぎて下痢も3日間続いた。
3年2組も間もなく学級閉鎖になった。推薦受験日を目前に控えた麻矢や山本さんらには辛いダメージとなってしまった。
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