第6話 告白バースト
時は変わらず放課後。閑散とした屋上にて。
太陽の日差しを普段よりも近い位置で受けながら、俺は──、
「──ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合ってください。付き合っ──‥‥‥」
──狂ったように、告白をしていた。
十月初頭。
暦の上ではもう冬らしいが、冬どころか秋の兆しもない。相変わらず、ムシムシとした肌に纏わりつく暑さが継続している。
涼しくなるのは、もう少し先になるだろう。
とはいえ今年は冷夏らしく、例年ほどの暑さはない。
太陽を間近に浴びて、全身汗でびっしょり‥‥‥とまではいかない。
周囲には、俺と霧矢以外に他におらず、俺の声だけがひたすらに木霊している。
もし、なにも事情を知らない人が今の俺を見たら、薬物の嫌疑をかけてくることだろう。
そのくらい自分でも頭のおかしい行動をしている自覚はある。‥‥‥が、これは必要なプロセスなのである。
「おほ、ごほ、つ、付き合って、ください。‥‥‥付き合ってくだ、さい」
最後の方は喉がイカれだして、咳混じりになったが、どうにか九十九回目の告白を終える。
──ふぅ。やっと終わった。
告白を終え、ちょっとした達成感に浸っていると。
ここまで沈黙を守ってきた霧矢が俺を見て幻滅していることに気づいた。頬がひくひくと引きつっている。
「あの、さ‥‥‥あんたは一体なにをしているの?」
「なにって、告白だよ告白。昨日、霧矢が言ったんだろ? 一〇〇回告白したら付き合ってあげるとかなんとか。ちなみにさっきので九十九回目な」
「いや、告白ってこういうのじゃないでしょ? もはや、告白の
「いやいや、告白は告白だろ?」
「いやいやいや、あんたのはただ馬鹿の一つ覚えみたいに何回も同じことを言ってただけ! あれのどこが告白よ?」
「なんだよ、不満なのか?」
「当然でしょ! こんなのノーカンだからねっ。告白としてカウントしないから! こんな作業的に告白されて、嬉しい女の子なんていないんだから」
「だったら、一〇〇回も告らせようとすんなよ! 一回一回に感情込めて告れるないだろ!」
「そこは頑張りなさいよ! 男でしょ⁉」
「性別関係ねえぇ! じゃあ聞くが、お前なら一〇〇回気持ち込めて告白できるのか?」
「ふん、できるわけないじゃない」
「なにを偉そうに言ってんだよ。お前だってできねえんじゃねーか!」
二人きりの屋上で、俺たちは騒ぎ合う。
基本的に声を張るタイプではないのだが、こいつと話していると、どうにも調子を狂わされる。
彼女は胸の前で腕を組むと、貴族のような偉そうな態度で言ってのけた。
「あたしから告白することはないってことよ。だから、一〇〇回以前に一回も告白なんてしないわ、絶対に」
「そりゃご立派な宣言ですね」
「わかったら、さっさとやり直すことね。ちゃんと一回一回丁寧に告白するのよ。そして、あわよくば告白の仕方を変更してくれると嬉しいわ。告白の仕方が思いつかないなら、ちょうど今あたしが持ってる少女漫画を参考にしてくれても‥‥‥」
あわよくば、以降の言葉は聞かなかったことにしよう。あわよくばだしな。強制力はない。
俺は額を右手で押さえながら、小さく首を振る。
「つか、なんで俺一〇〇回も告白しなきゃいけないんだ? 一回じゃダメなの?」
「ふんっ、当然じゃない。あたしのような完璧美少女がたかが一回告白されたくらいで陥落されるわけないでしょう? せめて、一〇〇回くらい告白されなきゃお話にならないわ」
「‥‥‥完璧美少女‥‥‥」
「なっ! 文句ある⁉」
かぁっと顔を赤らめて、激昂してくる。
放っておくと噛み付いてきそうなので、どうどうと宥めながら。
「いや、ないって。ないない。自己評価が高いのは悪いことじゃないしな」
「あたしをナルシストみたいに言うなっ。自己評価じゃなくて、絶対評価が高いの!」
「はいはい」
外見オンリーで絞れば、絶対評価が高いのは間違いない。が、内面を加味すれば、その評価は覆るはずだ。
霧矢はぷくっと頬を膨らませると、薄く開いた目で睨み付けてきた。
「じゃあそういうあんたはどうなのよ? 絶対評価が高いのかしら?」
「はあ? 高いわけねーだろ。下から数えた方が早い位置にいると思うぞ」
「なに初めから卑下してるのよ。もう少し客観的に自分を見なさいよね」
「事実だし、強がってもしょうがないだろ」
「そ、そんなことない! 少なくともあたしの中では‥‥‥ってぇ、なにフォローさせようとしてんのよ⁉」
「いや、フォローを求めてたわけじゃないんだが」
俺はポリポリと頬を人差し指で掻く。
ふと冷静になった俺は、小さく嘆息した。
なにを屋上でぎゃあぎゃあ騒いでるんだ俺らは。
呆れ返っていると、霧矢がジト目で俺を睨んできた。
「ってか、なんで九十九回しか告白しないのよ。あと一回で達成じゃない一応。もうこの際だから、最後までやり切りなさいよ」
「いや、もうやること済んだから帰るとするよ」
「は? ま、待ってよ。だからまだ終わってないって!」
「俺は終わったんだよ。初めから一〇〇回告白するとは言ってない。時間取って悪かったな、じゃ」
当初の目的通り、九十九回分の告白を済ませた俺は、踵を返して、屋上扉を目指す。
しかし、すぐに俺の右手を握られ引き止められた。
「ま、待っててば、
「え?」
その呼び名を聞いた瞬間、俺の脳裏に鮮明に蘇る記憶があった。
「お前、
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次話で最終回です( ̄^ ̄)ゞ
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