第41話

「あれだけ物があったから、打ち所が悪かったんだ」



「それって、どういう……」



嫌な予感で体から血の気が引いていく。



「千恵美は今も眠ったままだ」



冬夜が冷たい声でそう言った。



眠ったまま!?



あたしは唖然として顔を上げた。



3人とも悔しそうな顔をしている。



「俺は千恵美を支えていたつもりだったのに、なにもできなかった!」



冬夜が苦し気に叫ぶ。



「私たちも同じよ。千恵美の事を助けられなかった」



「千恵美の医療費は想像以上に高額だった。だから、今回の計画を思いついたんだ」



千恵美の父親の言葉にあたしは返す言葉がなかった。



あたしたちが監禁されたもの、動画を撮られたのも、視聴者からお金を得るため……!



千恵美のためだったんだ!



「……ごめんなさい……」



あたしは千恵美へ向けてそう呟いた。



ごめんね。



ごめんなさい。



ごめん。



何度呟いても足りない。



千恵美がずっと眠り続けているなんて、そんなの知らなかった。



けど、それは言いワケにだってならないことだ。



「これで、最後だ」



千恵美のお父さんがそう言った。



顔を上げるとその手には透明な瓶が持たれていた。



瓶の中には液体、そして布で蓋をされている。



昔映画で見た火炎瓶を思い出していた。



お母さんの手にはライターが握られていた。



「最後まで、動画を配信する」



そう言い、モニターに電源を入れる。



今までの経緯もすべて流されていたのか、コメントが画面を埋め尽くした状態だ。



《火炎瓶出た》



《燃やせ! 燃やせ!》



《みんな死ね!》



《死ーね! 死ーね!》



「いや……いやだ!」



涙と鼻水でグチャグチャになりながら、あたしは叫んだ。



「千恵美もそう言ったはずだ」



冬夜があたしを睨み付けてそう言った。



「だって……だってあたしが悪いんじゃないもん!」



駄々っ子のように叫ぶ。



「だって! だってぇぇ!!!」



火炎瓶に炎が近づく。



次の瞬間、あたしの目の前は炎に包まれていた……。

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