第39話
~スミレサイド~
1人で茫然と座り込んでいると、部屋のドアが開いた。
覆面男が3人立っている。
男……勝手にそう思っていたけれど……。
「……千恵美なんでしょ?」
あたしは座り込んだままそう言った。
モンターの電気はすでに消されていて、とても静かだった。
そんな中、一番背の低い覆面が一歩前へ出て来た。
右手を覆面にかけ、一気にはぎ取る。
その瞬間あたしは息を飲んでいた。
覆面から出て来た顔は中年女性だったのだ。
見たことのない顔に唖然とする。
「誰……?」
まさか千恵美とは全く無関係だったの?
そう思った時、今度は一番背の高い覆面がその姿を見せた。
女性と同年代くらいの男性だ。
「……もしかして、千恵美の両親……?」
あたしの呟きに、女性の顔が歪んだ。
じゃあ最後の1人が千恵美なの……?
あたしは覆面男へ視線を向けた。
それは……。
「冬夜!?」
思わず声を上げていた。
そう、最後の1人は美世の彼氏、そしてあたしと浮気をしていた冬夜だったんだ。
「なんで冬夜がここにいるの? なんで美世のこと……!」
冬夜がジリジリと近づいて来て、あたしを見おろした。
「まだわからないのかよ。俺がどうして美世とスミレに近づいたのか」
その言葉にすべての謎が解けた。
冬夜は元々この時のためにあたしたちに近づいていたのだ!
「だって……冬夜は千恵美のことなんて――」
「好きだった。ずっとな」
あたしの言葉をかき消してそう言った。
「でも、美世の嘘を信じたじゃん!」
「あんなくだらない嘘、本当に信じたと思うか?」
冬夜の冷たい声に背筋が冷たくなった。
「俺が一緒にいれば千恵美は更にイジメられる。そう思って離れただけだ」
「そんな……」
「映像の動画をメインで撮影したのも俺だ。さすがに女子更衣室までは入れないから、他の生徒に頼んだりもしたけどな」
ずっと前か冬夜はあたしたちがしてきたことを知っていたのだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい!」
あたしは床に頭をこすり付けて叫んでいた。
「千恵美は掃除道具入れに閉じ込められて、その後学校に行けなくなったのよ」
千恵美のお母さんが怒りを含んだ声でそう言った。
そうだった。
あれは中学3年生の冬の頃。
みんな進学が決まり、ハメが外れていたんだ。
『ねぇ、今日はもっと面白いことしようよ』
美世がそう言い出して、あたしと音は興味津々で話を聞いた。
『千恵美の机にラブレターを入れて、体育館裏に呼び出すの。ノコノコ出て来たあいつを掃除道具入れに閉じ込めてやろうよ』
『それ悲惨』
音がそう言って笑う。
『でも、寒いからやめた方がよくない?』
『どうしたのスミレ。もしかして怖いの?』
ニヤニヤと笑いながらそう言う音。
ここで頷けばあたしの立場は一気に悪くなる。
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