第22話
~スミレサイド~
特殊なスマホは音と美世にも手渡された。
2人の様子を見ていると、どんなことを記録されたのかなんとなく理解できた。
それからあたしたちが連れて来られたのは、とても広い洋間だった。
大きなテーブルに天使の石膏像。
窓も大きくてアンティークな雰囲気が漂っている。
ずっと6畳の部屋に閉じ込められていたあたしは、唖然としてその部屋を見回した。
ここは一体どこなんだろう?
窓の外の景色は木ばかりで、どこにいるのかわからない。
「音なら、こういう部屋に馴れてるでしょ」
美世が音へ向けてそう言った。
「そうでもないんじゃない? 音はお金に困ってたみたいだし」
音が答える前にあたしはそう言った。
音が怪訝そうな顔をこちらへ向ける。
その時、ドアが閉まる音が聞こえてきて振り向いた。
3人の覆面がいない。
続いてドアの鍵をかける音が聞こえて来る。
「ちょっと……」
ドアへ向けて移動しようとしたときだった。
カチャッと小さな音がして、手足の手錠が外れたのだ。
大きな音を立てて床に落ちる手錠。
音と美世の手錠も自然を外れている。
「これってどういうこと?」
美世が眉を寄せてそう言った。
「とにかく、あたしたちは脱出することを考えなきゃ」
あたしはそう返事をしてドアへと歩いた。
まだ足がしびれていて、上手く動かない。
どうにかドアまでたどり着いてノブを回してみるけれど、それはビクともしなかった。
「壊せばいいじゃん」
そう言ったのは音だった。
音は椅子を両手に持ち、ドアへ向けて振り下ろした。
大きな音が響き渡る。
しかし、それだけで壊れるほど弱いドアじゃない。
「あたしたちは窓を割ろう」
美世にそう言われて、あたしは頷いた。
ドアは無理でも、窓は割れるかもしれない。
あたしと美世は椅子を手に持ち、窓ガラスへと叩きつけた。
しかし、ガラスはびくともしない。
防犯ガラスになっているようだ。
それでもあきらめずに、何度も何度も繰り返す。
長時間拘束されていた体は、それだけで重たく、ダルくなってくる。
「やっぱり、簡単には壊れないようになってるね」
肩で呼吸をしながら美世が言った。
「そうだね……」
あたしも体力的に限界だった。
ちゃんとした生活を送れていれば、こんなに簡単に諦めることもなかったのに。
そう思い、再び椅子を持ち上げた。
その時だった。
部屋の壁の一面が左右に動き始めたのだ。
驚いて椅子を手から落としてしまう。
開いた壁の向こう側からは大型のモニターが現れた。
「なにこれ」
ドアを壊そうとしていた音も椅子を置き、そう呟いた。
「モニター?」
美世が眉間に眉をよせてそう言った。
全員の視線がモニターに釘づけになった時、画面に光が灯った。
その眩しさに目を細める。
モニターの中に出て来たのは覆面男の1人だった。
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