第20話

~スミレサイド~


それからあたしは数時間ほど眠ってしまったようだった。



犯人は無差別に誘拐したわけじゃない。



ちゃんとあたしを狙って誘拐したんだ。



なら、誰が?



そう思って考えていると、だんだん眠気が強くなってきてしまったのだ。



監禁されてから1日は経過しているはずだから、体は悲鳴を上げていたのだろう。



ふと目が覚めた時、部屋の中がいつもより明るく感じられた。



オレンジ色の蛍光灯に混ざり、白い光が差し込んでいる。



上半身を起こして確認してみると、部屋のドアが開けっ放しにされているのが目に入った。



「え……」



瞬きを繰り返し、それを何度も確認する。



覆面男が閉め忘れて行ったのだろうか?



そんなヘマをするとは考えにくい。



きっとドアを開けっぱなしにしたのは何かの罠だ。



そう思っても、外の様子が気になった。



這うようにしてドアに近づいていく。



外にはなにがあるんだろう。



ここから出るために必要なものがあるかもしれない。



そんな期待も膨らんでくる。



ドアの近くまで移動してきた時、白い光に目を細めた。



「誰!?」



部屋から少し頭を出した瞬間、そんな声が聞こえてきてあたしは小さく悲鳴を上げた。



顔をそちらへ向けると、あたしと同じように手足を拘束された少女が2人いた。



その顔に思わず絶句し、同時に目を見開いた。



「スミレ!?」



そう言ったのは音だった。



「音……美世?」



音の奥にいるのは美世に見える。



けれどその髪の毛はバラバラに切られている。



可愛い美世の姿はどこにもなくて、胸が痛んだ。



音も、制服がボロボロに引き裂かれている。



みんなここで何かをされたんだ。



「スミレ!」



音が這って近づいてくるので、あたしもようやく部屋を出た。



スミレが近づいて来た瞬間、あたしはあの動画を思い出してしまった。



近づいてくるスミレを警戒して見つめる。



「美世、大丈夫?」



スミレの後ろからようやくついて来た美世へ向けてそう声をかけた。



美世は小さく頷くだけで、視線をそらせてしまった。



もしかしたら、美世もあの動画を見たのかもしれない。



「2人とも、ここに監禁されてたんだよね?」



そう聞くと、2人とも頷いた。



「なんで……」



あたしたち3人の共通点と言えば、同じ中学校に通っていたことくらいだ。



一時仲が良かったけれど、今ではそれほど連絡を取り合っていない。



どうして3人が選ばれて誘拐されたのか、見当もつかなかった。



「あっ」



美世が怯えた表情を上空へと向けた。



その視線を追いかけてみると、そこには覆面男が立っていた。



いつの間にいたんだろう。



咄嗟に逃げようとするけれど、拘束されたままなので自由に動くことができない。



3人で固まるようにして身を寄せ合う。



すると、覆面男が小さな鍵を取り出した。

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