第17話

~音サイド~


定期的に壁を蹴って音を鳴らし、隣の部屋の人間を確認していた。



時々大声を張り上げてみるけれど、それは相手には聞こえていない様子だ。



聞こえているのは殴るような音だけ。



これじゃ自分の状況を相手に知らせる事も不可能だった。



何度目かの合図を送ってみた時、部屋のドアが開いて覆面男が入って来た。



男の手にはスマホが握りしめられていて、あたしは警戒して後ずさりをした。



「今度はなにをする気!?」



そう叫ぶ自分の声が震えていた。



またあんな屈辱的な写真を撮られてしまうかもしれない。



男が不意にあたしの目の前にスマホの画面を突き付けて来た。



咄嗟に身構えるあたし。



しかしスマホの画面に流れる動画を見て、「え?」と、眉を寄せた。



動画の中に写っているのは中学時代の友人である岡内スミレだったのだ。



スミレとは別々の高校に入学し、それ以来あまり連絡を取り合っていない。



「なにこれ」



動画の中のスミレは制服姿で冬夜と一緒に歩いている。



冬夜も中学の時の友人で、富本美世という友達と付き合っているハズだ。



「なんで冬夜とスミレが一緒に歩いてるの?」



思わずそう呟いていた。



冬夜と美世が別れたなんて聞いたことがなかった。



両親の承諾を得て一緒に暮らし始めたんだと、美世から連絡を貰ったのが最後だ。



「こいつらは最低だ」



初めて覆面男がそう言った。



驚いてあたしは画面から顔を上げる。



どこかにボイスレコーダーが仕込まれているようで、機械的な声だ。



「この女は淫乱だ」



男が言う。



「あんた、あたしたちのことを知ってるの……?」



そう聞くと、犯人はスマホを消し、何も言わずに部屋を出て行ってしまったのだった。

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