第11話

あたしの自慢の髪だった。



毎日綺麗にパックまでしてケアをしていた。



それがどんどん床に落ちて行く。



髪型で人の顔の印象は随分と変化する。



髪の毛がなくなってしまったら、もう今まで通りにはいかないだろう。



しばらくするとバリカンの音が消えて、背中の重みも消えた。



涙で視界が歪んでいて、体を起こす気力もなかった。



そんなあたしの体を覆面男が無理やり仰向けにさせた。



その瞬間、目の前にスマホのカメラがあった。



何度も何度もシャッターが下りる。



「やめて! とらないで!」



体を反転させようとすると、男が馬乗りになってきた。



また身動きが取れなくなる。



散々写真を撮影した男はあたしに手鏡を突き付けて来た。



そこに写っていたのは、髪の毛をガタガタ切られて泣きはらした自分の姿だった。



「写真を消して! お願いだから!!」



あたしは可愛い。



あたしはお姫様だ。



こんな顔みんなに見られるわけにはいかない。



こんな姿、本当のあたしとは違う。



こんなの見られたら……あたしは終わってしまう。



「お願いです。なんでもします。だから写真を消してください!」



何度も何度もそう言い、泣きながら懇願した。



それでも男は小さく笑い声をあげて、部屋を出て行ってしまったのだった。

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