優しい手つき


「存在自体が迷惑だねきみは」

顔も知らない誰かに言われた

確かにその通りだと思ったので

おれは縦に頷いた

そして赤信号の道の真ん中で

羊の群れが突っ立っていた

おれは思った

そのままだと死ぬぞ

だが思うは透明で

けして相手に真意を伝えることは出来なかった

羊は次々と撥ねられてしまった

「その仮面を剥げよ直ちに」

おれは叩き潰した

酸欠状態で

やるしかない

みんな気付いていない

この世界を覆い尽くす狂気が生まれて初めて可視化され

そして微笑みながらおれたちを毒殺しようとしている

細い首筋に巻き付いた指先

優しさを感じさせながら絞まろうとしている


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