overture

砂村かいり

プロローグ

 だん。だん。だん。だん。

 だん。だん。だん。だん。


 重低音が響き渡る。四つ打ちのドラムのビート。まるで内臓そのものを叩かれているかのような振動だ。

 闇の中でうごめく無数の頭はそれぞれに興奮の熱気と二酸化炭素を吐きだし、前方のステージに熱視線を注いでいる。

 ちらりと隣を見ると、両手にサイリウムを握りしめた彼は視線をステージに固定したまま口の中で何かぶつぶつ言っている。


 だんだんだんだん。

 だんだんだんだん。


 どうしてこうなったんだろう。わたしは口の中だけでつぶやく。

 けれど、たしかに高揚している自分にも気づいている。


 ストロボが激しく点滅し、そして世にも美しいメロディーが爆音でわたしの鼓膜に降ってきた。

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