第149話 「ニーハイソックス」

(蒼汰)


「お帰りなさいませご主人様ー!」


 結衣がいきなり抱きついて来た。いや抱きついたというより飛びついて来た。

 支えきれずに後ろ向きに転がされてしまい、結衣は俺をまたいだまま仁王立ちになっている。


「あ、蒼汰ごめーん!」


「痛てーよ!」


「ねえねえ蒼汰! 見て見て! 可愛いでしょ!」


 俺を跨いだまま、メイド服のすそを広げてポーズを取っていた。


「う、うん……」


 俺は猛烈に感動していた。

 何と言う素晴らし眺めであろう。

 メイド服の女の子に跨られている。

 夢のシチュエーションだ。

 結衣、結衣、結衣ー! ちょっと惚れそう……。


 俺が感動のあまり黙って眺めを楽しんでしると、結衣は俺が怒っていると勘違いしたのか、


「蒼汰ごめんニャ。お詫びにこれで許してニャン!」


 と言ってメイド服の裾をまくり上げた。


「ジャーン!」


 結衣の太ももが露わになって、ニーハイソックスと繋がったガーターベルトが見えた。

 ホワイトニーハイソックスにリボン付きの白のガーターベルトだと……。しかも何だあの可愛い白レースのパンツは!


 嬉し過ぎて声が出なかった。

 まさか俺の一番好きなものを結衣に見せられるとは思ってもいなかったのだ。

 結衣ぃ、今日はずっとこのままじゃ駄目か? 何なら夜まで一緒に居たい位だぞ。

 結衣が俺の選択肢ランキングを突き抜けた……。


「ふっふっふ。可愛いでしょー! フリフリの見せパンだから好きなだけ見たまえ。蒼汰の変態め!」


 ドS気味に勝ち誇る結衣に、今回だけは負けを認めざるを得なかった。

 俺はまさしく服従したワンコ状態だ。


「ふっふっふ。私の魅力にメロメロね!」


 結衣は完全勝利といった感じで裾を降ろして、俺の上から退いてしまった。

 ああ……至福の眺めが……。しかしだ、結衣……。

 俺は興奮のあまり冷静な思考が出来なくなっていた。

 気が付いてしまった結衣のミスを修正しようと行動を起こしてしまう。


「結衣! ガーターベルトのり具の所は下着の下を通すんだぞ! ちょっと良いか!」


 俺は起き上がってメイド服の裾を捲ると、結衣の見せパンに手を掛けた。


「ちょ、ちょっと蒼汰っ!」


 その瞬間、裾の上から俺の手を抑えながら結衣が座り込んだ。

 俺の両手は結衣のお尻と床の間に挟まれてしまった。


「痛てーよ!」


「そ、蒼汰? な、何してるの? ちょ、ちょっと待って。も、もしかして、いま、私のパンツ下ろそうとした?」


 結衣の顔が真っ赤だった。


「は? ガーターベルトの装着の仕方が違うから直してあげようと思っただけだ。そのままじゃトイレとかも行きにくいぞ。どうした?」


「ど、どうした? って、蒼汰は私のパンツ下ろそうとしたんだよ?」


「違うよ。吊り具の部分を外して見せパンの下にくぐらせようとしただけだぞ?」


「そ、蒼汰。見せパンだけれどパンツだよ。そんな簡単に引っ張たり潜らせたりして良い訳ないでしょ。見えちゃうよ……」


 顔を真っ赤にしながら話す結衣の言葉で、俺はやっと自分が何をしようとしていたのか理解した。

 ヤバい。殺される……。

 慌てて結衣のお尻の下敷きになっている手を引き抜いた。

 いや、引き抜こうとしたら、ガーターベルトの吊り具とかに引っかかり、ゴソゴソと動かしながら結構手間取ってしまった。


「ちょ、ちょっとー! そ、蒼汰……ど、どこ触ってるの! 馬鹿! 変態!」


「え?」


「もー! スケベ! 変態! 馬鹿蒼汰!」


 結衣は座ったまま両足をジタバタさせながら俺を蹴飛ばした。

 でも、いつもとは違い、ただ軽く蹴っているだけだ。

 めくれた裾からは、また大好きな眺めが覗いている。

 結衣は赤い顔をしたまま軽く蹴り続けていたが、足を上げているのに疲れたのか、蹴るのを止めて俺をじっと見ていた。


「ねえ、蒼汰……」


「ん?」


「あのさあ」


「うん……」


「蒼汰は私のこと好き?」

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