第40話 「憧れ」
(美咲)
感動の解散式が終わり、高校生になって初めての体育祭が終わった。
体調的には辛かったけれど、とても楽しかった。
グラウンドから教室に戻る途中で、保健医の
「天野さん。大丈夫だった?」
「はい先生。お蔭様で午後は平気でした。ありがとうございます」
「そう。それなら良かった。また体調崩して無いか心配だったから」
「ご心配おかけし……」
「あっ! あの子!」
先生が急に走り出したかと思うと、男の子を私の所に連れて来た。
連れてこられたのは蒼汰君だった。
先生が説明するには、私を保健室に運んでくれたのは蒼汰君だったらしい。
そっか、やっぱり蒼汰君だったんだ。
声が聞こえた気がしたもの。
また蒼汰君に迷惑かけちゃったな。
でも、いつもありがとう。
ところが、私と蒼汰君が知り合いだと分かったら、先生がまた乙女モードになってしまった。
「……二人はそうやって愛を育み、そして……」
何だか自分の世界に入ってしまい、そのまま校舎の方に戻って行った。
先生を見送っていると、後ろから声をかけられた。
お昼に話しをした早野先輩だ。
打ち上げを断った事を謝っていたら、気遣ってくれたのか、もうひとりの男の先輩とじゃれ合って笑わせてくれた。
正直、お昼間の先輩との会話を殆ど覚えていなかったので、失礼な事を言ってなかったか心配だったけれど、大丈夫そう。
後ろにいた青組女子団長の桐葉先輩も打ち上げに行くそうだ。
本当に忙しいから行けないけれど、何だかとても楽しそう。
体育祭の練習の時から見ていたけど、桐葉先輩は格好良いなあ。
話し方や態度が
それにとても綺麗な女性。
先輩達が行ってしまい、蒼汰君に改めてお礼を言おうと思ったら、嫌な目つきをした三年生の女子がやって来た。
話を聞いていると、私が早野先輩と話していた事や、打ち上げを断った事が気に食わないらしい。
困ったなぁ。私が話しかけた訳じゃないし、本当に忙しかったから断っただけなのに。
でも、こういう人たちって理屈が通じないのよね。
何を言っても上げ足を取るように言い返してくるし……。
私が中学生の頃、モデル活動をしていると知った女子から同じ様な事をされた。
数人で囲んで、
先輩だし、とにかく謝って終わらせてくれないかなぁ。
この手の人達って顔とか手で叩くと目立つから、足を蹴ってくるのよね……。
うーん、困ったわぁ。
そう思った時、急に蒼汰君が足元に飛び込んで来た。
私と三年生の女子の間に入って、私を守ってくれたのだ。
蒼汰君に助けて貰ってばっかり……。
でも、このままだと蒼汰君が何かされそう。そんなこと絶対に許せない。
そう思った時に、戻って来た桐葉先輩が一瞬で助けてくれた。
やっぱり桐葉先輩格好良い。
私もあれぐらい強い女性になりたいな……。
蒼汰君が起き上がったので、今日のお昼の事も含めてお礼を言った。
でも『蒼汰君で良かった』と言ってしまった後に、何だか恥ずかしくなってきて、付け足しで色々言っていたら、変な言い回しになってしまった。
失敗……。
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