第7話 「新しい高校生活」
(美咲)
暑い……。
何でこんな日に外出してしまったのだろう。
高校には編入試験や手続きで訪れていたのに、念の為と思い通学路を確認しに来てしまったのだ。
麦わら帽子のお陰で強い陽射しは何とか
帰りにバス停に着いた頃には汗だくで、ワンピースの中は下着まで汗でぐっしょり。
出来るだけ平静を
でも、バス停から海の方を見ると、陽光が波に反射してキラキラと光っていて綺麗だった。それまでは気が付かなかったけれど、時々吹く海風が涼しくて心地良い。
気持ちが少し
心地良い風に吹かれて、何となく笑顔になれた。
視界の端に何か見えたので顔を向けると、海沿いの道を走るバスが目に入った。見えたのはバスに当たった陽射しの反射光だった。
その時、目の前を歩いていた男の子が、急に
驚いて倒れないように支えようと思ったら、汗で滑ってしまい彼を抱きしめる様な感じになってしまった。
男の子は慌てて離れると謝って何処かに行ってしまった。
服や体が汗ばんでいて、湿っていたから申し訳ない。
気持ち悪かったかも知れないな……。
何でもない一瞬だったけれど、久しぶりに人と話をして触れ合った気がする。
そう言えば、母が旅立ってから今日まで誰とも話をしていない。
誰も知らない街。誰も知らない高校。
私はひとりぼっちだ……。
到着したバスに乗り込む時に何故か視線を感じた。
何気なく振り向くと、飲物を手に持ったさっきの男の子がいた。男の子と言っても多分自分と同じ年頃だろう。
見つめられていた気がしたけれど、多分気のせい。私はそんなに自意識過剰じゃない。
バスに乗り込むと一番近いバス停側の座席が空いていた。
理由は分からないけれど、私は昔からこの席が好き。
この席に座れた時は何だかラッキーな日に思えるのだ。
バスは海沿いの
明日から少し涼しくなってくれないかなぁ……。
海を眺めながら、そんな事を思っていた。
しばらく景色を見ていると急に寒くなってきた。
冷房を当てすぎて体が冷えて来たのだ。
汗で濡れた服や下着が冷たい。やっぱり最悪だわ……。
----
翌日から新しい高校生活が始まった。
偽名で過ごす事が気にはなるけれど、折角だから楽しく過ごそうと思う。
自己紹介で名前を間違えない様にと思っていたら緊張してしまった。
声が上ずってしまい、思った以上に高いキーで話してしまった気がする。恥ずかしい……。
先生に指示された席に行く途中で、何故かまた視線を感じた。
凝視するのもあれなので、チラッと確認すると既視感がある顔だった。
もしかして昨日バス停に居た男の子? 気のせいよね……。
ホームルームが終わるとクラスの女の子たちが集まって来た。
みんな興味津々で目がギラギラしていて怖い。
「家は遠いの?」
「茶色の髪は染めてるの?」
「彼氏は? 転校して来たなら遠距離? キャー!」
「目が綺麗! もしかしてハーフ?」
答える間もなく、次々に質問が浴びせられる。
「まあまあ、違うよ、居ないよ、違うよ」
どの質問に答えたのか分からない状態で声も小さくなってしまった。
まあ、いいか。
----
始業式の後に教室に戻ると、いきなり席替えが始まった。
クラスの皆は手慣れた感じで列を作り並び始めている。
私は
結果、私はクジを引く必要がなかった。
ホームルームの後で他の生徒と一緒に職員室に呼ばれた。宿題を集めて持って来るように言われている。
宿題の提出? 何それ。聞いてないわよ。初登校日よ……。
職員室に行くと、一緒に呼ばれた男の子が先生に軽く拳骨をされていた。宿題を忘れて提出できなかったらしい。もしかして、私も怒られるのかしら…。
もちろん、そんな事は無くて。呼び出された理由を先生から聞かされた。
クラスメイトの名前を早く覚えられるように、遠足のクラス委員のお手伝いをするという事だった。
それはそうと、担任の先生のお胸は大したものね。
大胆に開いた胸元が大人の女性って感じで素敵。女性の私から見ても感心してしまう程。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます