20 誰も知らない
「くそッ」
第一王子が悪態をつく。その醜態を見せるから王に向かないというのに。他国の使者に対しても、そうして対応するつもりだったのでしょうか?つくづく、考えが甘いかたです。
それに、追求してくる内容も、自分を中心に考えすぎです。私なら、ブルーム男爵に薬物の罪を着せようとしたところ、ポブレ子爵の領地で広まってしまったことを責めます。
まあ、それも、ブルーム男爵が独自に隣国と取引し、それを隣の領地に広めただけで、私は関係ないのですけどね……
「そ、そうだ!お前はいま、この婚約を蔑ろにしていると言ったな?それはお前もだろう!」
「私が…ですか?」
「ああ、そうだ!」
「何を証拠に、そのようなことをおっしゃるのでしょうか?」
「そうか、まだ誤魔化すか。ならば証明するがいい!俺の名前を呼んでみろ!」
「えっ」
第一王子の名前…ですか…………一切出てこないのですが。誰か、最初の一文字だけでも教えてくれる人は!
「…アメリア」
「申し訳ありません」
小声でアメリアに話しかけると、大変申し訳なさそうに謝られる。覚えていないということでしょう。
ルルア様はこの国のことや王妃としてなど、いろんなことを教えていただけましたが、陛下や第一王子のことだけは何も教えてくださらなかったんですよね。クリス様のことはよく話していたのですが…
ダメです。全然思い出せません!どうしたら…そうです!護衛をしている人に聞けばいいのです!
「ニア!」
「ここに」
「名前は」
「……申し訳ありません」
貴方もですか!もうダメですね。全然思い出すことができません。
「ですが、ご安心ください。もうこの茶番も終わります」
「どういう「何をしているのです?」」
大きい声を出したわけではない。それなのに、ルルア様の声はパーティー会場に浸透し、皆が膝をつきます。皆ではありませんでした。第一王子以外が膝をつきます。
「顔を上げなさい。皆の卒業パーティーを潰したのは、そこの王族であることはわかっています。ここにいるものに非があるとは思っていません。楽にしてください」
「待ってください、母上!」
「母上と呼ばないでください。私はあなたの母ではありません。私の息子はクリスただ一人だけです。さて、これ以上ここで話すことはないですね。ではトント行きますよ。それに、ソフィアちゃんも来てくれる?」
「はい。もちろんです」
ルルア様に誘われて、別室に向かう。もちろん、アメリアもニアもついてくる。二人は護衛ですからね。
それにしても、第一王子の名前ってトントだったのですね。初めて知ったのですが、一度でも聞いたことがあったでしょうか……
もしかして、私、第一王子に自己紹介されたことないってことは流石にないです…よね?
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