19 憂鬱な時間

「ソフィア様、準備ができました」


 今日は学園の卒業パーティーです。パーティー会場はお城で行われるのですが、一つだけ問題があります。


「はぁ」

「どうしたのですか、ソフィア様?」

「クリス様から聞いたでしょう?今日パーティー会場で第一王子に絡まれるのよ。何を言われるかわからないけど、面倒じゃない?」

「何をおっしゃるのですか!今日でもう見なくて済むんですよ?良かったではありませんか。今日だけです。今日だけ我慢してください」

「それは…そうなのだけど…」


 アメリアは王族のことになると、その、なんというか、すごく毒舌になります。特に、第一王子とクリス様に対してはより一層顕著になるので、クリス様に対してだけはもう少し、何とかならないでしょうか…


 他のことはなんでも聞いてくれるのに、このことに関しては聞いてくれないんですよね……はぁ


 憂鬱な気持ちを抱えながら、パーティー会場である王城に向かいます。

 私が会場に着いた時には、多くの方々が来ていました。嫌がっている間に、思っていたよりも時間が経っていたようですね。反省しなければ……


「皆様、ごきげん「ソフィア!」よう……はぁ」

「ようやく来たかこの悪女め!今日こそはお前の悪事をこの公の場で認めてもらう!もうお前の逃げ場はない!」

「一応、お聞きしますが、別室で行うという考えはないのですか?」

「またそうやって逃げるつもりか!周りにいる奴らには今日のことの証人になってもらう。逃がしはしないぞ!」


 はぁ、これもクリス様の予想通りですか…それともクリス様が誘導した?どちらにせよ、やはりこの方には王になる資格はありませんね。

 公の場で発言するリスクを考えていない時点で、自分の立場をわかっていないのですから……


「それで、あなたは私に何を言いたいのですか?」

「いつまでも、そうやって上から目線で…いいか!よく聞け!この女はメアリーの私物を壊したんだ!」

「アメリア、私はあなたの物を壊しましたか?」

「いいえ、ソフィア様は私の物を壊していませんよ。別にソフィア様になら壊して貰っても構わないのですが…」

「本人が壊されていないと言っているみたいですが?」

「そ、それは言わされているだけだろう!なあ、メアリー」

「私が殿下に言ったのは、ソフィア様なら『壊された物でも新しく買っていただけそうですよね』です。それを勝手にソフィア様に物を壊されたなどと…」


 これは、本当のことなんでしょうけど、殿下を嵌めるために、もっと勘違いしそうな言い方をしたんでしょうね…


「メアリー……くっ、なら、俺を支持していた連中を排除したのはお前だろ!」

「それに関しては、本当に何を言っているのかわからないのですが…」

「俺が婚約破棄をしたことで、その仕返しに、俺を王にさせないようにしていることは分かっているんだぞ!」

「本当に話を聞いていただけないのですね。ですがひとつだけ、婚約破棄ではなく、白紙です。破棄にしたいならそれで構いませんが、賠償していただけるのですか?」

「賠償だと!それはお前が行う物だろう!」

「陛下が決めた婚約を蔑ろにしたのはあなたです。それに、浮気をしたのもあなたです。どうして私がその責任を追わないといけないのでしょうか?」

「俺は王族だぞ!」

「だからあなたは王には向かないのです。そのような考えでは、この国はすぐに潰えてしまうでしょう」

「何を言っている!」


 ここまで話していても、何も理解できていない。だからダメなのです。お母様が言っていた人形遊びがもうできそうにないというのは、この方では、人形にすらならないと判断され、捨てられたのでしょう。それで、連絡を取れなくなったからって、私のせいにされましても……

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