????視点

「先生は、ソフィア様は第二王子と婚約することで幸せになれると思っているのですか?」


 周りには誰もいないことを確認し、自分の後ろを歩いている先生・ニアさんに話しかける。私が侍女になるために、いろんな技能を教えてくれた。それにソフィア様を守る術も。

 だから、私は影としてソフィア様を守れるようになったのに、今は別の任務があり、結局できてはいない。


 先生は第二王子とソフィア様、どちらかしか選べないとなった時はすぐさまソフィア様を選ぶような人だと、数年一緒にいて思った。だけど、直接は聞いていない。絶対に教えてくれないから。でもいつかは聞き出したいと思っている。

 そんな彼女だからこそ、本気で考えてくれると思ったのに…


「…あなたにとって、第一王子の方がよかったですか?」

「冗談ではありません。どうしてあれの方がいいと言う話になるのですか?私は本気で聞いているのです」

「あの二人が昔は仲が良かったのはあなたも見ていたでしょう?」

「でも、今は覚えておられません。あの事件のせいで」

「抑えなさい。殺気が漏れていますよ」


 あれを殺す機会はいつでもある。いつでもあるからこそ、我慢するのが辛い時もある。


「まだ殺してはいけませんよ。それをしてしまってはソフィア様に迷惑がかかってしまいますから」

「…分かっています」

「ならいいのです。それに、私は第二王子が婚約者になったとしてもいいと思いますよ。あの時のソフィア様の笑顔を知っていれば」


 あの時、立派な庭で、お茶会の用意がしてあるのにもかかわらず、ソフィア様がポツンと一人待っていたのは今でも記憶に残っている。そして、第二王子が話しかけたことで、笑顔になったことも…


「…ムカつく」

「不敬罪ですよ」

「先生がそれを言いますか?」

「私はいいのですよ」

「先生はずるいですね。会った時からずっと」


 ソフィア様に名前を覚えられていることも、ソフィア様を守っていることも、何もかも私とは正反対だ。私も早くこんなことを終わらせてしまいたい。


「まあ、そう言わないで。それで、進展はどうなの?」

「おかしなくらい良好ですよ。どっちも」

「そう。それは良かった。だけど、「『自分の失敗は自分以外にも帰ってくることをしっかりと理解しておくこと』ですよね」」

「ええ、もう言わなくても大丈夫そうね」

「はい。もうしっかりと覚えていますよ」


 影として、私の失敗はソフィア様に帰ってくるかもしれない。そう教えられてきた。だから、今の仕事もしっかりとこなしていかないと。

 それがソフィア様の幸せにつながるのならば、私はなんでもする覚悟はできています。

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