5 私の思いと両親の思い

「他にはないのかい。フィー?どんなことでも良いんだよ?」


 私は首を横に振るだけにします。何がきっかけになるのかわからないのが少し怖いです。


「そうかい?思いついたらなんでも言うんだよ。もう我慢はダメだからね」

「ええ、フィーは我慢強い子ですから、少しと言わず今までの分、わがままを言っても良いのですよ?」


 わがままのレベルを超えてしまっていますよ、お母様!正直、両親は厳しいけれども、家族思いの良い両親だと思っていました。ですが、私に対して甘々すぎるのですが…、あの時の厳しさはどこに行ったのでしょか?


 いいえ、昔から厳しくされた思い出が全くありませんでしたね。唯一あったのは婚約の件でしょうか?それだけでイメージを勝手に持ってしまっていたのでしょう。そう思うと自分のことが嫌いになりそうです。


「何を気にしているの?私たちの態度がそんなにおかしかったかしら?」

「いいえ、けど…、私が……」

「フィー、ちゃんと言って欲しい。もう私たちは後悔したくないんだ」

「…私が勝手にお父様やお母様が厳しいと思い込んでいて、それが嫌で、どうしたらいいのか」

「フィーには厳しくしていましたよ?その認識で間違いはないわ」

「けれど、私は!私は思い込んで、勝手に距離をとって、今になって縋り付いて…」

「もう、本当にこの子は……困った子ね」

「ああ、全くだ。フィーには第一王子の婚約者ということもあり、他の令嬢達よりも多く勉強させていたし、貴族としての嗜みも厳しくしてきた。それなのに、一体何を気にしているのか。本当に困った子だ」


 ですが、あれは私のためであり、将来苦労しないためのものです。それを厳しいと思っていいわけがありません。


「それは、私のためにしていただいたことですから…」

「フィーがやりたいことならそうだったのだろう。だが、実際は違う」

「フィーが嫌がっていることは知っていました。だけど、それが国のためだと、そう思って接してきたのは紛れもない事実です」

「今度はちゃんと、フィーが望むことがしたいんだ。今更だけど、頼って欲しいと思う」

「お父様、ありがとうございます」

「それで、フィー、生徒会のメンバーは誰がいるんだい?」

「えっ、第一王子を始めとして、役職は知りませんが、ペーロ伯爵子息、ファイサン侯爵子息、モーノ伯爵子息だったと思いますけど……」


 何も考えずに事実を伝えたのですが、何も考えずに答えてしまったことに気づき、ハッと口を塞ぎます。


 いつもならこんなことはないのに。気が緩み過ぎです私!


「そうか、ありがとう」


 お父様が絶対に悪い顔をしているのがわかります。頭を撫でてもらえますが、私はもう誤魔化されませんからね!キッとお父様を睨みますが、とてつもない笑顔を向けられて、何も言えなくなります。

 反省です。次に活かせばいいのです。人間は失敗から学ぶものなのですから。そう自分に言い聞かせておきましょう。


 悪役令嬢というのはわからないのですが、もう、私が何もしなくても悪役らしくなるのではないでしょうか。私、学園を数日休むつもりだけだったのに……

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