4 悪役令嬢として

 それからのことは正直覚えていません。目が覚めると両親と一緒のベッドで眠っていました。私ったらなんてはしたないことをしてしまったんでしょうか。


「フィー?起きたの?」

「お、お母様!昨日は申し訳ありませむぐっ」

「その堅苦しいお口はこうです」


 私はお母様のその豊満なお胸に顔を埋められます。とっても柔らかいです。そんなことを言っている暇がありません。だんだん息が…

 お母様を軽く叩き、解放してもらいます。


「ぷはぁっ、お母様、何をなさるのですか!」

「せっかく、娘が甘えてきてくれて、やっと母らしいことができたのです。自業自得とは言え、嬉しかったのですよ?」

「それは…」

「だから、もう少し一緒に寝ましょ」


 お母様にそんなことを言われては断ることはできません。いつもお母様の側にいる侍女のルルアも暖かい目をして、部屋から出て行きます。

 あっ、段々眠気が強く……


 結局私は寝てしまいました。まあ、こんな日があってもいいですわよね。うん。そういうことにしておきましょう。起きた時にはお昼で、目を開けるとお母様が微笑んで私を見ており、お父様には頭をずっと撫でられていました。少し恥ずかしのですが、それ以上に嬉しく思ってしまいます。


「それで、フィー」

「?はい、なんでしょうかお父様?」

「第一王子や例の男爵令嬢について、どういうことをするつもりなんだい?」


 気のせいでしょうか。柔らかく聴き心地の良いお父様の声で聞かれた質問の後に「どんなことでもしてあげるよ。きっちりね」という副音声が聞こえた気がしますが、気のせい…ですよね。


「直接何かをするつもりはありませんわ。ですが、私が悪役令嬢とおっしゃるのであれば、それらしいことを少ししてみようと思っていますわ」

「うんうん。それで、フィーは何をするの?」

「とりあえず、学園は1週間ぐらい休もうと思っています。殿下たちは生徒会なのに仕事をしていなかったので、私一人でしていたのですが、私が休めば必然的に彼らに仕事が回っていくでしょうし…」

「へぇ、生徒会の仕事を一人で、ねぇ…」

「お、お父様?」

「そう、フィーはやっぱり頑張り屋さんだったのね」


 お父様の聞いたことのないような低い声に少しびっくりしてしまい、思わずお父様を呼んでしまいましたが、後ろからお母様に抱きつかれ、頭を撫でられます。その間にお父様が何か独り言を言っていたのですが、お母様が私の耳を塞ぎ、うまく聞き取ることはできませんでした。一体、お父様は何を言っていたのでしょうか?


「それで、フィーは他に何か考えていることはないの?」


 やっと耳を離してくれたお母様が私に聞いてきますが、他のことでしょうか?悪役令嬢とは言ったものの、困ったことに私にはどんなことをすれば良いのか正直わからないのですよね。


「あまり、考えていませんでした。あっ、例えばあの男爵と取引をしている商会と取引しないとかでしょうか」

「皆、聞いたな!我がローズ家はこれからどんな些細なものであったとしても、ブルーム男爵と取引した商会とは一切取引しない!これをすぐさまどんな手段でもいい。大きく広めろ!」

「「「「「「「承知しました!旦那様!!!!」」」」」」」


 迂闊すぎました。こうなることは予想できたはずなのですが、意見として聞こうと思ったのですが、このままだと私が言ったことは全部実行されそうな気がしてしまいます。

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