第63話 「バジルとファヒータ」

 大陸南部に広がる砂漠地帯にあるサンドランド国。

 その王子のひとりであるルンダーンの屋敷では、今日も二人の女性が寄り添っている。

 ひとりの女性は、やや褐色がかった肌に切れ長の目、妖艶ようえんな美しさを漂わせている。もう片方の女性は、かなり色白でつややかな肌色と、透き通った翡翠ひすい色の瞳をしていて、その容姿は可憐でとても美しい。

 バジルとファヒータだ。

 二人とも薄く美しい衣装をまとい、普段は夫たちと共に過ごすベッドに腰掛けながら、会話を弾ませている。


「本当ですわよ。ルンダーン様に『ケーバブの方が、モノが大きくて上手』と言ってみて下さいませ。きっと激しく嫉妬しっとされながら大興奮されますわよ」


「ええっ本当に? ウフフ。今度試して見ますわね」


「ええ。ケーバブは『ルンダーン殿や他の男の方がたくましくて良かった』などと言うと、嫉妬して興奮して大変ですわよ」


「まあ。バジル様は、ご経験が豊富なのですね」


「ええ。奴隷どれいとして売り買いされて、その様な事は数えきれない程」


「そうなのですね。そんなに沢山の方と致されていたとは……」


「人族だけではございませんわよ」


「そ、それは、どういう事ですか?」


 ファヒータが驚いた様な顔をしながら、バジルの傍に身を寄せた。


「大勢のゴブリンや大きなホブゴブリン。醜悪しゅうあくなオークとも交わりましたわよ」


 驚きの余りファヒータは声が出なかった。

 人族以外と生殖行為をして交わるなど、彼女には想像も付かない事だったのだ。


「お聞きになりたい?」


 バジルの艶やかな問い掛けに、ファヒータは黙って何度もうなずいた。


 ――――


 バジルの話は、ファヒータにとって衝撃的で官能的だった。

 ゴブリン達に次々と犯された時の話。想像すら出来ないホブゴブリンの大きなモノを受け入れた時の話。何人もの男達にもてあそばれ、次々と精を受けた話。

 ファヒータは、ルンダーンとケーバブの二人からもてあそばれる事は有るが、それ以外の男との経験は無い。

 彼女はバジルの話にすっかり引き込まれてしまい、とても淫靡いんびな気持ちになっていた。


「ねえ、バジル様。そ、その時はどのような格好をさせられたのですか」


「そうですわね……。ファヒータ様、そこで四つんいになって下さいますか」


 ファヒータはバジルに指示された通り、ベッドの上で四つん這いになった。

 バジルはファヒータの体を動かし、男共にさせられたいやらしい格好を真似させる。


「ええっ! このような卑猥ひわいな格好を、裸のままで何人もの男達の前で、させられたのでございますか」


「ええ。そして、ここをこの様に……」


 バジルの指が、ファヒータの下着にもぐり込み、厭らしくまさぐり始めた。既に興奮していたファヒータは、思わず嬌声きょうせいを上げてしまう。

 バジルは指を厭らしく動かしながら、ファヒータの翡翠ひすい色の瞳を覗き込んでいる。


「バ、バジル様……」


 バジルは恥ずかしそうに上気したファヒータの顔を見ながら、妖艶ようえんな微笑みをたたえ、そのまま口づけをした。

 ファヒータもそれに答え、二人で濃厚な口づけを繰り返す。


 バジルはファヒータを裸にすると、口と指とをいやらしく使い始めた。

 そして、女だからこそ分かる密やかな箇所をまさぐり、卑猥ひわいな言葉をつぶやき、彼女をとろかせた。

 ファヒータ耳元で、凌辱りょうじょくされた時の事や、醜悪なモンスター達との生々しい生殖行為を語り。彼女に淫靡いんびな想像をさせ、幾度も絶頂に導いた。


 バジルは自分も裸になり、恍惚こうこつの表情をしているファヒータに裸体を絡めた。

 豪奢ごうしゃなベッドの上で、バジルの褐色がかった肌色と、ファヒータの色白でつややかな肌色が美しく絡み合っている。

 ファヒータはバジルの胸にすがり付き、乱れた呼吸を整えた。


「もう、バジル様ったら……。ルンダーンやケーバブ様より、上手なんだもの……」


 ファヒータがとろけた様な表情をしながらバジルの唇を吸うと、バジルもいとし気にファヒータを見つめ、互いに口づけを繰り返した。


「今度は私の番……」


 ファヒータが慣れない手つきで、バジルの体を優しくまさぐり始めた……。


 ――――


 バジルとファヒータが、美しく甘美な夜を過ごしている時。夫であるケーバブとルンダーンは、王宮で激しくののしり合っていた。


「貴様は我がきさきに色目を使いおって! 恩が有るゆえ、見逃しておったが、もう我慢ならん。一刻も早く我が屋敷より出て行け! 出て行かねば息の根を止めるぞ!」


「貴殿こそ、我が妻に衣装を与え、その場で着替えろなどと、不埒ふらちな事を言っておるそうでは無いか! 言われずとも、こちらから出て行かせて貰う!」


「何だと!」


 ルンダーンが腰の剣に手をやると、ケーバブも応じた。

 二人は一触即発の状態。どちらかが剣を抜けば、そのまま殺し合いが始まりそうな雰囲気だった……。

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