第47話 「新たな出会い」
「あ! 割れちゃった……」
旅の途中で手に入れた赤い石『恋人石』を指輪にしようとした時でした。
真ん中で綺麗に割ろうと思っていたら、鎚で叩く前に割れてしまったのです。小さな欠片と、大きな欠片になってしまいました。
「恋人石」は二つ以上に割ると、引き付け合い輝き合うという不思議な効果が無くなると聞いています。
どうするのか話し合った結果。いつも仲が良い二人に合わせて、指輪を作る事になりました。
衝撃で割れない様に、強固な魔法を掛けたドーム型のガラスの中に、恋人石の欠片を入れて指輪を作ります。
小さな、と言っても私達の指に丁度良いサイズの指輪と、とても大きなサイズの指輪が完成しました。
指輪同士の位置を変えてみると、ガラスのドームの中で、確かに欠片が引き付け合う様に移動します。「恋人の指輪」作成に成功したようです。
そしてこの指輪を着けるのは……。
「にゃぁ!」
「おれ、うれし、にゃ!」
ハナちゃんとボンさんが大喜びです。赤く輝く恋人石を見せ合いながら、二人で変な踊りを踊っていました。
ボンさんは大好きなハナちゃんが居る方向がいつでも分かる様になり、とっても嬉しい様です。
こんなに喜んでくれるのなら、恋人石が綺麗に割れなくて良かったと思いました。
――――
街に帰ってきてからというもの、お店に関する事もですが、ファミリアメンバーの育成や、装備の作成などで忙しい日々が続いています。
そんな中、今日は
もちろん、ベニさんが風水師の能力で組み上げたものを、私がクラフトで調整したものです。
実は、甘藷が野生動物に食べられて困るという問題が起きていて、その対処を施していたのでした。
野生動物が飛び越えても入れない様な高さにすると、塀が不安定で倒れそうな感じになります。
これでは危ないので、塀にしっかりと幅を持たせる事にしました。
出来上がった塀を見ると。街を囲む城壁ほどの高さではありませんが、
不便が無いように門や通路を付けていると、お婆さんが話し掛けて来ました。
「おやおや、凄まじい風水師とクラフト師だねぇ。この国の王宮に仕えている者かい?」
「え? あら、こんにちは。王宮なんてとんでもありません。この街のファミリアのメンバーですよ」
「街のファミリアだって? こんなのがゴロゴロ居るのかい。恐ろしい国だねぇ」
「あら。お婆さんは、この国の方では無いのですか?」
「ひひひ。ちょっと美味しい物を食べに来たのさ」
「美味しい物?」
「ああ、そこにある甘藷だよ。あんた達が作っているのかい?」
「ええ、皆で作っています」
「そうかい、そうかい。その甘藷はどこに行ったら食べられるんだい?」
「でしたら、私達のお店にいらして下さい。今から戻りますから、ご一緒しましょう」
「それはありがたいねぇ。ターコスや婆を背負ってくれるかい」
「はい、シャルお婆様」
ターコスと呼ばれた青年が、お婆さんを背負います。
背負うのをお手伝いしようと、お婆さんの背中を押した時でした。私の「解析」スキルが発動したのです。
その途端、私は倒れそうになりました。
天を割り地を裂く様な、凄まじい魔力を感じたのです。
「お、お婆さんは、もの凄い魔導士様なのですね」
思わず口に出してしまいました。青年が驚いた様に振り返ります。
「ひひひ。あんたはそんな能力も持っているのかい。大したもんだねぇ。後でゆっくり話がしたいねぇ」
お婆さんを背負った青年は、少し離れた場所で待っていた娘さんと共に街へと歩いて行きます。
私はまだふらついていましたが、慌てて三人の後を追いました。
――――
「私がミントで、この人がターコス。で、このクソ
とてつもない魔力を持つお婆さんを、驚く様な呼び方で娘さんが紹介してくれました。
でも、お婆さんは笑顔です。
話を聞いていると、ミントという明るい娘さんは、シャルお婆さんのお孫さんらしくて、ターコスさんはその夫だそうです。
三人のお話はとても楽しくて、皆でいつまでも話をしてしまいました。
シャルお婆さんは、この街をとても気に入ったらしくて、住む家を探すと言われています。
住むだけではなく、お婆様には色々としたい事があるそうで、お家を探す事とクラフトでリフォームをお手伝いする事になりました。
――――
シャルお婆さんは、魔法に関する
特に
私達も研究のお手伝いをしながら、多くの事を教えて頂きました。
そして、シャルお婆さんは、藷所野ファミリアの魔法の先生になって下さったのです。
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