呪いの手紙
はちやゆう
壱枚目
親愛なる読者さまへ。この手紙は読まないで下さい。
なんのことかと思われるかもしれません。ですが、これ以上はどうか読まないで欲しい。あなたの興味を惹くためにこのようなことを書いているわけではないのです。これは警告なのです。見ず知らずのひとに向けて、どうしてわたしがこの手紙を読まないで欲しいと願うのかといえば、これは呪いの手紙だからです。
この手紙をまだ読まれているのでしょうか。読まれているようならすぐに捨ててしまうのがいいでしょう。いちいちが気を惹くようで鬱陶しい。たいへんけっこう。この手紙を捨てて、拾ったことも忘れてしまうのがいいと思います。
ときに旺盛な好奇心というものは恐怖という感情を曇らせます。わたしもそうでした。そんなつもりは毛先ほどもなかったのです。もしかして、と思うきもちはたしかにありましたが、こんなことになってしまうと思い至るほどわたしの想像力の手は長くはありませんでした。
わたしは何もしていない。そこでみていただけなのです。それなのに彼は死んでしまった。彼はぎょろりと目を剝いてこちらをうらめしそうに睨むのです。「おまえがわたしを殺した」と咎めるように。わたしにはどうにか彼を助ける方法があったのかもしれません。でも、そのときのわたしには思い浮かぶものではありませんでした。結果的には、これは直接的ではないにしろ、わたしが殺してしまったのに等しいのかもしれません。
わたしはわたしが悪くないという確信がほしかった。わたしはそことは関係がない、無関係だという証明がほしかった。わたしはわたしが選択したものではなく、運命のイタズラでこのような境遇に陥っているのだと実感がほしかった。
だってそうでしょう。もし、わたしが悪いのならば、それはわたしが彼を殺してしまったのと違いはないのですから。
そのようにして、わたしはわたしの責任を回避すること、若しくは、わたしの罪、といえるのでしょうか、そのような考えを、雪ぐためにどうすればいいか、に頭を悩ませることになりました。
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