王城制圧


 団長ストームヴィルを討ち取ったことで玉座の間にいた敵は武器を捨て、皆がおとなしく降伏した。

 すぐに騎士たちと叛逆騎士たちは城内へ走ってその知らせを届けた。

 戦いは終わったのだ、もう争う事は何もないのだ、っと。


 俺としてはかなり迅速に団長を討てたと思っていたので、怪我人も少ないと思っていたが、すぐのい玉座の間にやってきたキサラギとアンナ、ヘンリックにエフィーリアらの話を聞いてみれば、死人も怪我人もそこらじゅうにいるという。

 

「王城地下の叛逆騎士たちは武装解除させたよ。貴族院のゴーレムも持ち込んでたけど、使われる前に魔力源切らせておいた」


 アンナは涼しげな顔で言って、梅色の髪をぱさっと払う。


「アンナは素晴らしい剣術家であることを証明しましたわ! 本当にすごかったのですのよ!」

「正直、かなり驚いています。あのバルバトス副団長をああもたやすく斬り捨てるとは」


 エフィーリアやヘンリックなど、その場で目撃していた者たちからは絶賛の嵐であった。あまりにも圧倒的だったせいで、ウィザーズパレスの下層では戦いが最小限におさえられ、多くの叛逆騎士が投降したという。


 たぶん、アンナさんだけだったら皆殺しにしてたでしょう。

 でも黄金の姫エフィーリアのいる手前だし、そうはしなかった。

 いや、もしかしたら、エフィーリアが止めたのかもしれないけど。

 現場の状況はこっちで勝手に推測するほかないが、なにはともあれ、アンナは大活躍したらしい。


「兄様兄様、キサラギも大活躍しました」

「ほう、言ってごらんなさい」

「マスターの確認戦果621名。城の外周は血の海です」


 なんかブラックコフィンが喋ってるんだけど……。

 その子そんな機能あったっけ……。


 キサラギも自慢げなのでまあ褒めましょう。

 というか621名……? おかしいな正門突破してから10分くらいでストームヴィルを討って戦闘修了に持ち込んだはずなんだけど……。


 想像を絶する殲滅能力に恐怖する。

 キサラギを怒らせてはいけない。


 その後、場内では大規模な残党が潜んでいないかの調査がすぐに実施された。

 結局、侵入ルートはアンナとエフィーリアらが押さえた地下遺跡であったと推測された。

 地下遺跡は複雑でその全容はだれにも知られていないため、普段は厳重に7重の扉で封鎖されているらしいが、そこが解放されていたのだ。


「おそらくは城内部の者が手引きしたのですわ」

「貴族派に買われた騎士がいたと」


 エフィーリアは沈痛そうな表情でうなづく。

 裏切者探しという嫌な仕事を避けて通ることはできない。


 かくして叛逆騎士1,041名の内240名が死亡し、680名が負傷した。

 801名が城の各所で身柄を拘束され、それぞれが捕縛されている。

 しばらく時間はかかるだろが、ひと息ついてもいいだろう。


「姫様」

「どうしました、ヘンリック」

「捕虜の騎士がおかしなことを申しております」

「おかしなこと?」


 俺、アンナ、キサラギ、エフィーリアが玉座の間で死んだストームヴィルの遺体を確認しているところへ、様子のおかしいヘンリックが小走りでやってきた。

 

 なにかあったのだろうか。


『試練の時は近いかもしれない』


 え? どういうことですか……?


『……』


 匂わせ入りましたね。

 試練の時、か。

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