第七章 魔法王国の動乱

最西端の町アーケストレスの川門


 

 魔術王国王都での日程を終え、俺たちは出発することになった。

 

「すぐに戻ってきます、ゲンゼ」

「そんなに焦らなくてもいいのですよ。フラッシュもエメラルド卿も、クリスタ卿も、わたしと暗黒の末裔たちを守ってくれますから」


 これからローレシアへ帰国する。

 落ち着いたら今度は暗黒の末裔たちを迎えに戻り、のちに、クルクマへと大移動をすることになる。

 暗黒の末裔の大移動など目立って目立って仕方がないのだから。

 その時には狩人協会員として人類保存ギルドの協力を得る。

 もっとも希望的観測だ。

 最も俺にそんな力が与えられるのかはわからない。

 

 もう約束したのでどうにかするしかないのだが。

 あの黒くてふわふわな一族はみんな守ってやるのだ。


「それじゃあ、もう行きます。すぐに帰ってきますからね」

「アーカム……どうか気を付けて」


 ゲンゼがはぐをしてくる。

 豊かな双丘がふにゃっと潰れるのが至福。

 いかん。こんなこと考えていてはフラッシュに殺される。

 って、もうこっち凄い眼で見て来てるんだけど。ステイ、ステイ、フラッシュ。


「義兄さんも、また、会いましょう、ね」

「当然だろう。目を離せば、貴様がゲンゼになにをするかわかったものじゃないからな」


「ばいばい! お兄ちゃん!」

「絶対に帰って来てね!」


 暗黒の末裔たちに見送られ、俺は巨大樹の宿屋をあとにした。

 卒業配信をしているキサラギを拾って、次に向かうは武器屋だ。

 先日の戦いで銀の剣を消耗したので、アンナは買い足しているのだ。

 最も狩人協会の銀の剣は『最高級』つまり三等級の剣であるので、一般の武器屋で手に入る『良質』の剣では品質で圧倒的に劣る。

 それでも銀の武器ではあるので、怪物を御することはできるが消耗は激しい。

 現に先の怪物派遣公社との戦闘で、アンナとフラッシュは吸血鬼相手に、銀の剣を2本ずつ、計4本も折ってしまっている。

 まあ、あの2人が剣の扱いが雑という意味でもあるのだが、それにしても一回で使い切るなんて正気じゃない。


「悪くない銀剣買えた」


 武器屋から出て来るアンナは満足げだった。

 

「それはよろしゅうございました。さ、行きますよ」

「うん」


 王都東門より、馬で駆ける。

 夜にはひとつ隣の町へとたどりついた。


 その町で2日ほど休憩し、再び東へ。

 アンナが柄の悪いやつらに絡まれたり、キサラギがゲリラ配信をはじめたり、俺は美味しいご飯を探して露店をさまよったり、各々自由に町での時間を過ごした。

 そんなこんな7日も経てばローレシア魔法王国最西端の町にたどりついた。


 魔術王国と魔法王国の国境には巨大な河が横たわっている。

 『終末へ続く河』と呼ばれる平均川幅200mの大河だ。

 この河の西側が魔術王国で、東側が魔法王国だ。

 

 河川上要塞都市アーケストレスの川門は、名前だけなら魔術王国の町に思えるが、実際はローレシア魔法王国最西端の町として知られている通り、魔法王国の領土である。実質的に河川上は魔法王国領土ということになる。

 

 アーケストレスの川門は頑強な背の高い石壁で守られた塔のような見た目をしており、外壁は何段にもわけられ、各段にバリスタが設置され、常駐する兵士がいたりと、実に緊張感ある雰囲気を漂わせている。


「どうしたあんなに兵器が。魔術王国を警戒してるの?」

「あれはモンスター用。キサラギは終末へと続く河には海竜が住んでいるのを知っています。たびたびアーケストレスの川門は襲撃にあっているので、ああして海竜を追い返せる準備をしています」


 現地の人みたいにキサラギが解説してくれた。

 ん、あっ、外壁の一部が騒がしくなり始めて……河面から首の長い竜が現れた。

 

「ドラゴン、だと……」


 とんでもない場面に出くわしてしまった。










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 こんにちは

 ファンタスティックです


 書籍化作業開始にともない『異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。』の投稿文字数を減らします。

 毎日更新は続けるつもりですが、もしかしたらしばらく更新をお休みするかもしれません。現在、三作品毎日更新しているのですが、作業のリソースをどこからか捻出しないといけないため、本作からまずは削ることにしました。悪しからず。


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